生物多様性保全に配慮した里山林の評価手法と管理技術に関する調査

課題名 生物多様性保全に配慮した里山林の評価手法と管理技術に関する調査
研究機関名 山形県森林研究研修センタ-
研究分担 森林研究研修センタ-
研究期間 継H16~20
年度 2005
摘要 (目的)被害や撹乱を受けた里山地域の森林について,生物多様性に配慮した持続可能な森林経営に向けた生物指標を探索し,林分の管理技術を開発する。(研究の要約)ナラ類集団枯損被害は,平成元年以来,増加拡大傾向にある。平成17年度の枯死本数は,過去最高の45,368本となった。特に,何の防除策も講じない新潟県からの影響を受けた温海町での激害は続き,小国町・長井市まで被害が波及した。また,温暖な海岸林に点在するミズナラの枯死被害は17年度も続いたが,行政の完全駆除対策により被害は秋田県には及んでいない。その他に最上地方では新庄市・鮭川村・大蔵村にも被害が拡大し,内陸の村山地方での18年度の被害拡大が懸念される。被害拡大様式は,庄内と内陸のミズナラ帯,海岸林に分かれて拡大し,1年間の飛び火的な被害は7.6±3.8Km(最小1.1Km,最大22.1Km)の範囲で拡大する。ナラ枯れ被害の枯死木駆除方法としては,丸太と伐根に対してシート被覆後にヤシマ産業製エコヒューム・メチルイソチオシアネート30%(以下「エコヒューム」)を注入処理し1ヶ月放置したところ,ガス濃度360g/m3でカシノナガキクイムシを100%殺虫できた。また,平坦地で植生の少ない条件下では,4人1組の伐倒駆除処理作業で約2.1m3/日の処理が可能であることが明らかになった。また、山形市で発生したカツラマルカイガラムシが原因の広葉樹林の集団葉枯れ被害は,15年度1市1地区5.92ha,16年度2市5地区13.04ha,17年度3市12地区71.93haと山形市を中心とした都市近郊の広葉樹二次林で拡大している。全国的には,長野県や山梨県でも増加傾向にあり,被害林で共通しているのは,ブドウ畑・クリ園などの放棄地が近辺に存在するか,殺虫されないクリの老木が存在する点である。山形県におけるカツラマルカイガラムシの生活史は,6脚を伴う孵化幼虫が7~8月に被害木から羽化して近くの枝や幹を歩行して新たな加害対象に到達する。歩行するのはわずかに2~3日程度であり定着するとロウ分を排出して介殻(かいこう)を作り,その後は介殻内で2令幼虫となり,9~10月には成虫となり介殻内で産卵することが観察された。山形県は寒冷地に属することから,カツラマルカイガラムシは1年1化であることが確認された。(今後の問題点)ナラ枯れ被害については,現在カシノナガキクイムシの集合フェロモンによる大量捕殺試験に取組んでおり,単木的防除と面的で大量捕殺可能な方法の組合せが必要である。カツラマルカイガラムシ被害は今後被害林を調査して防除に役立つ効果的な方法の開発が必要となる。
専門 森林生物
部門 林業
カテゴリ カイコ 管理技術 くり 経営管理 フェロモン ぶどう 防除

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