課題名 |
(2) 農業活動等が物質循環に及ぼす影響の解明 |
課題番号 |
2009014010 |
研究機関名 |
農業環境技術研究所
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研究分担 |
(独)農業環境技術研究所,物質循環研究領域
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協力分担関係 |
南京土壌研究所(中国)
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研究期間 |
2006-2010 |
年度 |
2009 |
摘要 |
ア 温室効果ガス発生抑制、土壌炭素蓄積を含む総合的な温暖化緩和策の定量的評価 1)農耕地からの温室効果ガス発生量の推計と抑制技術の定量的評価 水田は温室効果ガスであるメタンの重大な人為的発生源である。世界各国の温室効果ガス発生量の算定に用いられているIPCC ガイドラインが2006 年に改訂され、本研究所の成果も反映され、水田からのメタン発生量の算定方法は、より精度の高いものとなっている。この方法と世界の水田耕作に関する統計データを用いて、世界の水田からのメタン発生量を算定し2,560 万トンであることを明らかにした。また、間断灌漑の導入と稲わらの管理の改善により、それぞれ、410 万トンのメタンが削減可能であることを示した。本成果は、水田からのメタン発生が地球温暖化に及ぼす影響の再評価と、地球温暖化を緩和する稲作技術の開発に大きく貢献するものである。 農耕地から発生する亜酸化窒素の削減技術に関する圃場試験の文献値を収集し、統計解析を行うことで、慣行肥料と比較した平均的な削減効果は硝化抑制剤入り肥料で38%、被覆肥料で35%であることを明らかにした。本研究は、農耕地における亜酸化窒素の全体的な削減ポテンシャルについて世界で初めて定量的に評価したものである。2)土壌有機物動態モデルの広域検証と土壌炭素蓄積量変化の全国推定 土壌中の炭素動態を計算するローザムステッド・カーボン・モデル(RothC)を日本の全農耕地に1km解像度で適用することにより、堆肥の施用や二毛作による作物残渣のすき込みを増やす仮想的なシナリオに基づき、土壌への炭素蓄積効果を、全国レベルで推定した。県・地目別1970~2020 年の現実的な有機物投入量シナリオ2 種類(すう勢シナリオ及び緩和策シナリオ)を作成し、土地利用別、都道府県別のシナリオ別炭素投入量データを整備した。さらに、空間解像精度を高めるため、最大面積の土壌と地目で代表させていた1km メッシュ内を、土壌と地目の組み合わせで細分化してモデルに入力出来るように改良した。これらの研究は、現実的なシナリオに基づきわが国の農耕地土壌炭素量の変動を精度良く全国推定するために重要である。イ 土壌圏から水域への栄養塩類の流出動態の解明に基づく流域水質汚染リスク評価手法の開発1)土壌有機物動態モデルの広域検証と土壌炭素蓄積量変化の全国推定 土硝酸性窒素による地下水汚染に対する環境脆弱性評価硝酸性窒素による水質汚染に対する環境脆弱性(気象・地形及び土壌的要因の違いによる水質汚染の生じやすさ)を評価するために、霞ヶ浦流域内の土壌・地形的条件の異なる104地点について、標準的な営農条件の下での硝酸性窒素の地下水流出濃度・流出量およびそれらに対する年間降水量の変動の影響のモデル予測を行った。得られた値を補完し、地下水流動過程や水辺域における脱窒による濃度減衰を土壌類型別に考慮した地下水中硝酸性窒素濃度の面的分布を予測することにより、硝酸性窒素による地下水汚染に対する環境脆弱性評価図を作成した。地下水中NO3-N濃度は、有機物含量が低い淡色黒ボク土の分布地域や、地下水位が比較的深い鹿行台地で低い傾向が見られた。また、地域によらず、水辺域(河川・湖沼周辺などの湿性土壌分布地帯)では顕著な濃度減衰がみられた。
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カテゴリ |
肥料
水田
二毛作
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