(2)農家所得の向上を目指した水利用の高度化による経営複合化

課題名 (2)農家所得の向上を目指した水利用の高度化による経営複合化
課題番号 2010015010
研究機関名 国際農林水産業研究センター
研究分担 (独)国際農林水産業研究センター,生産環境領域
協力分担関係 タイ農業局
研究期間 2006-2010
年度 2010
摘要 ・ 丘陵地に関しては、東北タイの伝統的集配水システムである「ファーイ」の水動態に関して、構築した水文モデルに過去30年間(1980~2009)の気象データを入力することによって、越流量、越流時期の年変動をシミュレートし、8月中に越流が発生すれば田植え用水として利用できるとして評価したところ、約7割の確率で有効に利用できていること明らかにした。また、経営複合化のための主要作物栽培に関する節水栽培技術指針が農民試験により農民等の手で作成され、東北タイにおいて農民交流による普及が開始された。さらに、ノンセン村において事後調査を実施し、その結果を整理し、経営複合化指針を作成した。・ 低地に関しては、ラオス国ナトン村で、天水田における代かきの効果について、減水深および効果浸透量を少なくすることで、田植え可能時期が拡大され、減収を抑えることが期待できることが明らかになった。・ 山地に関しては、ラオス北部焼き畑農業地域おいて、焼き畑斜面における流出、土壌浸食、養分損失量の特徴を明らかにし、これをもとに土壌肥沃度マップを作成した。また、水資源量の分布特性と地形解析から、水田の適地マップを提示した。そして、持続的・安定的農業経営の方向性およびラオス低地天水農業地域における経営複合化の方向性を提示した。・ 育成したIR64-INL334系統について、雨季および乾季3年間に得られた8つの農業形質(到穂日数、稈長、穂長、葉身長、葉身幅、穂数、一穂籾数、籾重)とDNAマーカー遺伝子型の情報のデータベースを作成した。現在Web上での公開を目指し準備を進めている。・ AWDが土壌肥沃度に及ぼす影響を知るために、連続4年(8作)のAWD処理終了後のIRRI試験圃場表層土・下層土中に含まれる主要な土壌炭素(3種)・窒素(5種)濃度を常時湛水処理区と比較した結果、有意差はいずれの土層においてもすべての土壌炭素・窒素形態において認められない。稲わら施用区では、傾向としてAWD区で常時湛水区と比較して、炭素・窒素濃度が低下することが認められたが、稲わら無施用常時湛水区より高い値を示した。AWD管理により土壌肥沃度に顕著な影響が生じるには4年以上の年月がかかる。・ 水稲栽培が必要な生産資材を投入したとしても、他の作物に比較して収益性が高く優位であることから、対象地の稲作導入と拡大は経営的にも十分に可能である。・ 対象地では、湛水面が地表付近まで上昇する湛水(累積降水量500mm)は雨水、その後の水位の急上昇による湛水はボルタ川の氾濫水によっている。季節的湛水パターンをもとにした湛水予測は耕種技術の開発に応用できる。・ 畑地に比べて低地の土壌肥沃度が高く、同じ低地内でも肥沃度の差異が空間的にも認められ、肥沃度の観点から、稲作適地判定が可能となった。・ 対象地付近においてリン鉱床の存在を明らかにすると共に硫黄がイネ生育を一様に制限しており、その施用効果は土壌の窒素供給力が高い低湿地側でより大きい。このことは、施肥技術の改善に応用できる。・ 雑草データベースPlants in lowland savanna of West Africaに19種を追加するとともに、日本語版も作成した。また、現地調達可能な選択性除草剤は、いずれもB. enneandraを除く草種に高い防除効果を示した。・ 選抜した冠水耐性イネの耐性メカニズムは、1)冠水前に同化した光合成産物の冠水中の転流速度を抑制する、2)嫌気ストレスによる葉身のクロロフィル崩壊を回避するの2つが示唆される。・ IRRIが育成した冠水抵抗性系統のAG(Anaerobic germination)+Sub1は、冠水条件下での発芽能力が顕著で、これは置床48時間以内の水分吸収速度が関与している。また、冠水条件下では幼苗の伸長を抑制することで、クロロフィル量の減少を抑制している。AG+Sub1系統は、高発芽、種子から発芽器官への養分高転流速度による出芽促進、根・茎葉の高乾物生産向上が特徴的である。・ 東南アジアのモンスーンはEl Nino Southern Oscillation (ENSO) やIndian Ocean Dipole mode (IOD)などの気象現象と密接な関係がある。ベンチマークサイトのインドネシア・ジャワ島の実測降雨の経年変動とENSOとIODの発生状況を比較し、ENSO やIODとの連動性が高いことを確認し、大気海洋結合モデルSINTEX-Fを用いた季節予測モデルの利用価値が高いことを示した。・ 季節予報モデルのコンポーネントとなる作物生育モデルの選定のため、関連モデルのレビューを行い、IRRIが開発したORYZA2000が有効なツールである判断しORYZA2000をモデルとすることにした。・ 作物研から導入した早朝開花系統をIRRIの温室で栽培したところ、熱帯でも早朝開花し登熟することが確認された。この系統は高温ストレス耐性の遺伝資源・研究材料として有望である。・ 季節予報モデルの開発に必要な現地の長期気象データの有無と情報へのアクセス、現地研究機関での研究実勢体制について評価をおこない、中央ジャワにあるPati市Jakenan村およびラオス中部Savannakhet州サバナケット市を候補地として選定した。・ IRRI試験圃場での試験を行うため、これまでのIRRI長期気象データ及び土壌データに基づき、プロジェクトが対象とする地域に類似した試験圃場を選定した。・ プロトタイプDSSを選定するために関連する研究に関する文献レビューを行った。その中で、IRRIのSite Specific Nutrient Management (SSNM)は、IRRIのホームページ上で操作できる肥培管理のための意思決定ツールで、携帯電話のメッセージ機能を利用した操作もフィリピンで実用化されており、プロジェクトの意思決定システムを開発する上で参考になるシステムである。
カテゴリ 病害虫 遺伝資源 管理技術 経営管理 栽培技術 雑草 除草剤 水田 施肥 データベース DNAマーカー 抵抗性 肥培管理 防除

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