(1) 影響評価モデルの開発と食料供給安定化のための方策の提示

課題名 (1) 影響評価モデルの開発と食料供給安定化のための方策の提示
課題番号 2010015016
研究機関名 国際農林水産業研究センター
研究分担 (独)国際農林水産業研究センター,国際開発領域
協力分担関係 中国農業科学院
研究期間 2006-2010
年度 2010
摘要 バングラデシュを対象に、傾斜や土壌等の7種類の地理的属性から乾期作米(Boro)の栽培面積及び生産量を推定する多変量モデルを開発した。本モデルの推定精度(決定係数R2)は前者が0.85、後者が0.83であった。得られたモデルをGISにおける地図演算式として展開することにより、1ha単位での栽培面積及び生産量が推定可能となり、バングラデシュ全土の適地評価図が作成された。・ 災害に脆弱で過去に大規模な飢饉を経験しているバングラデシュを対象とし、コメ需給モデルの構築とそれを利用した需給予測を行った結果、(1)海面上昇は沿岸部のクルナ地方やボリシャル地方の農地を減少させると予測されるが、コメ生産に占める同地域のシェアが小さいため、バングラデシュ全体のコメ生産量に及ぼす影響は小さい。(2)気温上昇による生育期間の短縮や高温障害が、主要コメ産地であるラジシャヒ地方、ダッカ地方、チッタゴン地方にも及ぶため、中程度の温暖化シナリオ(今世紀中の気温上昇が2.5℃程度))であっても、2050年の供給量が精米換算で260万トン(約5%)減少し、国全体の食料安全保障に少なからぬ影響を与える。(3)最も高温となるシナリオ(今世紀中の気温上昇が3.4℃)では、食料供給の減少が予測され、高温に抗して食料安全保障の悪化を防ぐには、乾期作で年3%、雨期作で年1.5%程の収量(単収)成長率が必要となる、ことが明らかになった。・ 世界食料モデルの拡張の一環として、気候変動による農業被害をモデルに取りこむために、影響反応関数をモデルに統合した。このモデル体系を利用する事で、海面上昇等によって減少する農地面積、高温に影響される収量、温暖化に伴う災害被害の増減などを、予測に反映させることができた。栽培適地の移動を予測に反映させるために、2種類の計算方法を考案した。一つは地域ごとのポテンシャルとしての農地面積の変化を面積関数に反映させる方法である。もう一つは、対象地域をグリッドに分割し、全てのグリッドで農民が同様の経済行動を選択すると仮定した後、各グリッドの耕作面積に栽培可能なグリッドの数を乗ずる方法である。バングラデシュのプロトタイプモデルを使って検証したところ、双方の計算方法は類似の結果をもたらすことがわかった。そこでバングラデシュに関する実証研究では、モデルの構造が直感的に理解しやすく計算の過程も単純な後者の方法を選択した。・ 世界食料モデルのコメ生産と消費に関わるIPCCの社会経済シナリオ別シミュレーション結果を詳細に検討した結果、もし地球温暖化が進めば、インド、ブラジル、アメリカでのコメ生産が減少し、ベトナム、ラオス、カンボジアなどの他極東地域の生産量が増加することが示された。一方、中国、タイ、インドネシア、バングラデシュ、フィリピンのコメ生産は、温暖化の影響を受けないことも示された。そして、環境変動の影響を最小化するための食料生産対策シナリオとして、CO2排出量の少ないエネルギー開発を進めて気候変動に対して脆弱な途上国での気温上昇を抑え、また、同時に、対高温の品種開発と栽培方法の確立を進めることが必要であることが示された。
カテゴリ 高温対策 品種開発

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