課題名 |
(1) 農業生態系を構成する生物群集の動態と生物多様性の解明 |
課題番号 |
2010014996 |
研究機関名 |
農業環境技術研究所
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研究分担 |
(独)農業環境技術研究所,生物多様性研究領域
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研究期間 |
2006-2010 |
年度 |
2010 |
摘要 |
(1)調査・情報システムの開発と景観構造と生物多様性の関係解明(普及に移しうる成果:生物多様性に関する情報を収集、蓄積、提供するためのWEB 版農業景観調査情報システム(RuLIS WEB))全国の農業生態系区分(60クラスに分類)と地点ごとの生物多様性観測情報をWeb-GIS(地理情報システム)上で表示、提供(ダウンロード)できるシステム(WEB版農業景観調査情報システム(RuLIS WEB))を開発し公開した。本システムには、現在、RuLIS モニタリング地区の植生や鳥類分布データ、全国を対象とした植物分布や小動物の分布データが蓄積されており、誰でも情報の取得とデータ入力が可能である。本システムに観測情報を蓄積することにより、環境保全型農業の導入効果の評価や人間活動の変化が生物多様性へ及ぼす影響を国土全体で総合的に評価することが可能である。(2)農法及び農地周辺の管理が植物群落に及ぼす影響栃木県4地域、福島県2地域の栽培管理の異なる水田において、水生昆虫等の種類・個体数を調査し、水生昆虫(甲虫目、カメムシ目、トンボ目)等の種数が、有機・減農薬栽培水田では慣行栽培水田に比べて有意に多いこと、周辺のため池数が多いほど水生昆虫の種数が多く、農法間での種数の違いも大きいことを明らかにした。この成果は、有機・減農薬栽培など環境保全型農業が水生昆虫類等の多様性を増進させる効果を持ち、その効果は、周辺に生息場所が多く、種が豊富な地域において高いことを示している。水田地帯を主な生息域とする準絶滅危惧植物であるタコノアシを対象として、主要な水稲用除草剤(ベンスルフロンメチル)の影響を組み込んだ個体群動態モデルを作成し、水田、休耕田、河川における存続可能性を評価した。その結果、水田では耕起と除草剤の影響により、休耕田では自然遷移の影響により、いずれも個体群が消失するが、耕作と休耕を適度な間隔で転換すると個体群が存続することが明らかになった。また、河川中のベンスルフロンメチルの濃度は同種の絶滅リスクを試算した濃度よりも低いため、河川における除草剤の影響は無視できるレベルであることが示された。この成果は、水田地帯の湿性植物の保全には耕作や除草剤の影響に配慮した管理が有効であることを示すものである。
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カテゴリ |
病害虫
カメムシ
栽培技術
除草剤
水田
農薬
モニタリング
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