② 作物の感染応答機構の解明と複合病害抵抗性育種素材の開発

課題名 ② 作物の感染応答機構の解明と複合病害抵抗性育種素材の開発
課題番号 2013023134
研究機関名 農業生物資源研究所
研究分担 高辻 博志
林 長生
南 栄一
西澤 洋子
森 昌樹
姜 昌杰
菅野 正治
山崎 宗郎
?橋 章
井上 晴彦
大竹 祐子
研究期間 2011-2015
年度 2013
摘要 1. イネのサリチル酸(SA)経路を介した病害応答の活性化に、転写因子WRKY45のMAPキナーゼカスケードによるリン酸化が関与していることがわかった。また、環境ストレスを媒介するアブシジン酸(ABA)シグナルを受けると、SA経路中のMAPキナーゼOsMPK6が、チロシン残基から脱リン酸化されることで不活性化し、その結果、抵抗性誘導剤によるWRKY45遺伝子の転写誘導が抑制され、いもち病抵抗性誘導が低下することがわかった。また、チロシン脱リン酸化酵素OsPTP1/2の遺伝子をRNAiによって抑制したイネでは、抵抗性誘導剤によるいもち病抵抗性の誘導がABAによって低下しないことがわかった。これらにより環境因子によるイネの誘導抵抗性の低下が説明できる。
2. Pb1は、育種利用が進められている穂いもち病ほ場抵抗性遺伝子である。これまで、Pb1によるいもち病抵抗性がSA経路の転写因子WRKY45に依存していること、一方、WRKY45はユビキチン-プロテアソーム分解を受けており、これによって病原菌非感染時のWRKY45タンパク質 量が抑制されていることを明らかにした。今回、Pb1によるいもち病抵抗性機構をさらに解析した結果、Pb1の結合によってWRKY45のプロテアソーム分解が阻害されることにより、防御応答遺伝子のWRKY45に依存した発現が増強することがわかった。以上から、Pb1によるいもち 病抵抗性機構の少なくとも一部が説明できる。
3. 植物は病原菌由来の物質(MAMPs)を細胞表層の受容体で認識することによって防御応答する。キチンはいもち病菌を含むカビの細胞壁 構成成分であり、イネの細胞膜に局在するCEBiPとOsCERK1がキチン受容体であることがわかっていた。CEBiP及びOsCERK1のMAMPs応答にお ける役割を明らかにするために、相同組換えによる遺伝子破壊法を用いて、それぞれの遺伝子を破壊したイネを作出した。それらを用いた解析により、CEBiPはイネの主要なキチン結合タンパク質でありキチンを特異的に認識すること、一方、OsCERK1はキチン応答に必須の受容体型キナーゼであり、キチン応答に加えて一部のペプチドグリカン応答にも関与することが明らかになった。また、CEBiPとOsCERK1はいずれもいもち病菌感染初期の抵抗性に寄与することが確認された。
4. 陸稲品種「嘉平」のいもち病ほ場抵抗性は複数のQTLから成ることがこれまでわかっていた。今回、それらのQTLの中で最も寄与率が高いPikahei-1(t)の遺伝子を単離・同定し、Pi63と命名した。Pi63は、CC-NBS-LRRタイプのタンパク質をコードし、いもち病菌菌系に対する特異性を有していた。また、Pi63によるいもち病抵抗性の強さは遺伝子の転写レベルと相関していた。これらの結果から、Pi63は真性抵抗性遺伝子であり、「嘉平」に見られる広汎ないもち病菌菌系に対する強いいもち病抵抗性は、Pi63及び菌系特異性の異なる類似の抵抗性遺伝子からなる複数の抵抗性QTLの自然集積により構築されたと考えられる。
5. 改良したWRKY45発現コンストラクトを導入した飼料イネの隔離ほ場栽培を進め、優良系統選抜のための農業形質に関するデータを蓄積した。また、新規感染応答性WRKY45発現コンストラクトによるイネ系統について複合病害抵抗性及び農業形質を調査し、さらに改良されていることを確認した。
カテゴリ 育種 いもち病 抵抗性 抵抗性遺伝子 病害抵抗性 品種

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