④ 植物の耐虫性と害虫の加害性の分子機構の解明

課題名 ④ 植物の耐虫性と害虫の加害性の分子機構の解明
課題番号 2013023136
研究機関名 農業生物資源研究所
研究分担 門野啓子
谷合 幹代子
今野 浩太郎
井上 尚
長谷川 毅
田村 泰盛
松本 由記子
小林 徹也
研究期間 2011-2015
年度 2013
摘要 1. トビイロウンカやツマグロヨコバイは凝固性唾液と漿液性唾液を植物体内に吐出し、篩管液の吸汁を成立させている。しかし唾液成 分の機能はほとんどわかっていない。加害性、非加害性バイオタイプのツマグロヨコバイ唾腺のRNA-seqを行い、分泌性タンパク質と予測 された1,582コンティグのうち発現上位11遺伝子について、唾腺、胃、マルピーギ管で転写レベルを調べたところ、vitellogenin遺伝子以 外はすべて唾腺特異的であり、本ライブラリーは唾液成分タンパク質遺伝子の多くをカバーしていると期待される。タンパク質側からの解析では、これまで溶解が困難だったトビイロウンカ口針鞘を溶解し、SDS-PAGEで分離した10本のバンドのうちN末端配列が解析できなかっ た3つのタンパク質についてLC-MS/MS解析を行った。このうちの1つは唾腺ESTデータベースに存在し、唾腺で最も多く発現している遺伝 子であった。通常のタンパク質組成に比べチロシンの含有量が有為に高く、強固な難溶解性はチロシンを介した架橋によるものであることが示唆された。
2. 昨年度単離に成功したインド型イネ品種由来のトビイロウンカ抵抗性遺伝子BPH26に加えてBPH2の解析を行ったところ、マッピング、 加害性バイオタイプの反応などからBPH2はBPH26と同一である可能性が示唆された。BPH26を保有するNIL系統上でのトビイロウンカの摂食 行動を、吸汁測定装置で測定した。トビイロウンカの口針が篩部に到達したことを示す波形は観察されたが、継続した篩管吸汁波形は観察されなかった。よって、BPH26により篩部での吸汁阻害が引き起こされることが分かった。in situハイブリダイゼーション法により、BPH26は葉鞘内側の若い未展開葉で最も強く発現しており、維管束での発現が比較的強い傾向があることが示唆された。
3. Bph1加害性/非加害性トビイロウンカ系統近交系間でのF2世代81個体とSNPマーカー700個を用いたBph1加害性のQTL解析により、Bph1 はトビイロウンカの第10連鎖群に存在することが明らかになった。超高速シーケンサーを利用したバルク法により、Bph1加害性と連鎖するSNPを4つ得、これらのSNPで目的遺伝子を1.9cMに絞り込むことができた。
4. パイナップル、キウイフルーツ、サトイモ、ヤマイモ、ブドウなどを含む多くの植物が組織内にシュウ酸カルシウムの微細な(長さ0.01~1mm程度)針状結晶を多量に含んでいる。パイナップル、キウイフルーツなどでは、高濃度のシステインプロテアーゼがシュウ酸カル シウム針状結晶と共存することが知られている。シュウ酸カルシウム針状結晶とシステインプロテアーゼを一緒に与えると、それぞれを単独で与えた場合に比べて顕著な耐虫効果が観測された。シュウ酸カルシウムの無定形結晶ではこのような効果が見られなかったこと、除結晶キウイフルーツ抽出液(異なるプロテアーゼを持つ)に針状結晶を添加することで増強効果が見られたことから、シュウ酸カルシウム針状結晶は他の耐虫物質の作用を顕著に増強する効果があることが明らかになった。
5. ハスモンヨトウ抵抗性/感受性の各ダイズ葉を、石原産業系統、住友化学系統のハスモンヨトウに与えた。住友化学系統で明瞭な抵抗性ダイズの耐虫効果が見られ、RNA-seqで抵抗性ダイズ摂食時に特定遺伝子の発現上昇が顕著な石原産業系統がより高い耐虫性打破能力を 持っていることが示唆された。
カテゴリ 害虫 キウイフルーツ さといも 大豆 データベース 抵抗性 抵抗性遺伝子 パイナップル 品種 ぶどう

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