課題名 | ⑤ 昆虫に関わる生物間相互作用の解明と利用技術の開発 |
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課題番号 | 2013023137 |
研究機関名 |
農業生物資源研究所 |
研究分担 |
霜田 政美 村路 雅彦 新川 徹 安居 拓恵 前田 太郎 辻井 直 中島 信彦 宮本 和久 三橋 渡 渡部 賢司 和田 早苗 村上 理都子 陰山 大輔 |
協力分担関係 |
沖縄県農業研究センター 信越化学工業株式会社 |
研究期間 | 2011-2015 |
年度 | 2013 |
摘要 | 1. BT毒素Cry1Abが作用するために必要なカイコで同定されたABCC2遺伝子を培養細胞で発現させることにより、非感受性であったカイコ由来の培養細胞が感受性に変化した。これまで、BT毒素活性の検定にはチョウ目幼虫が使用されていたが消化液の影響等により毒素の機能解析は困難だった。今後、感受性にした培養細胞を使用して、BT毒素の作用機構解析を行うことが可能になった。 2. キチョウにメス化を引き起こす共生細菌ボルバキア(wCI+wFem)を発生初期のカイコ卵に注射することにより、オス卵が早い段階で死ぬことがわかった。ボルバキア感染による昆虫の生殖制御(メス化)はこれまで人工的な再現実験が困難だったが、カイコ卵はメス化の分子機構解析のための実験系として有望である。 3. トビイロウンカ実験室飼育系統のRNA-seq解析を行いイフラウイルス科の新種ウイルスを3種類発見した。甘露(排泄物)中にウイル スが排出されるためトビイロウンカ甘露ウイルス(Nilaparvata lugens honeydew virus, NLHV 1, NLHV 2, NLHV 3)と命名した。RNA-seqで初めて検出されるウイルスは量が少なく精製困難でウイルス学的に記載できない場合が多い。今回、粗分画から抽出したウイルス核酸のノザン解析により粒子形状の似たウイルス同士を判別した。ウイルス―媒介昆虫間の相互作用を解析する際には未知ウイルスの存在も考慮する必要がある。 4. サトウキビの重要害虫ケブカアカチャコガネの合成フェロモン剤の実用化をめざし、沖縄県宮古島の農地で実証試験を行った。今回、交信かく乱製剤として、長さ20㎝のチューブタイプと25mのロープタイプのディスペンサーを試験した。その結果、いずれのタイプの製剤も有効性が高く、安価な合成品であるラセミ混合物(R体とS体が1:1、rac-2B)を用いた場合でも、実際の農地において高い防除効果が得 られることを確認した。 5. 土着天敵は、殺虫剤に代わる未来の害虫防除技術として普及が期待されている。農業利用を図るためには野外生態系における生物間相互作用を理解する必要があることから、土着天敵の捕食/被捕食関係を明らかにするための生物種同定法の開発を進めた。土着天敵ヒメハ ナカメムシ類の腸内容物から捕食された生物を同定するために必要な情報として、(1)野外からヒメハナカメムシ6種11個体群を入手し、 ミトコンドリアDNA全域の塩基配列を決定するとともに、(2)ナミヒメハナカメムシのランダムDNA断片のシーケンシングを行い、種内変異 や種間差違を検出するためのDNAマーカーの開発を検討した。 6. 天敵寄生蜂の寄主制御機構を探るため、アオムシコマユバチ毒液の主要成分であるシステインリッチ分泌タンパク質CgVP1のcDNAをク ローニングし、タンパク質構造を推定した。CgVP1はアミノ酸18残基からなる分泌シグナルをもち、成熟タンパク質は81残基、うち8残基 のシステインが4対の分子内ジスルフィド結合を形成すると考えられ、相同性検索により、これまでに報告のない新規毒液タンパク質であることが示唆された。 |
カテゴリ | カイコ 害虫 カメムシ さとうきび DNAマーカー 土着天敵 フェロモン 防除 |