② 作物の感染応答機構の解明と複合病害抵抗性育種素材の開発

課題名 ② 作物の感染応答機構の解明と複合病害抵抗性育種素材の開発
課題番号 2014025641
研究機関名 農業生物資源研究所
研究分担 高辻 博志
林 長生
南 栄一
西澤 洋子
森 昌樹
姜 昌杰
菅野 正治
山崎 宗郎
髙橋 章
井上 晴彦
大竹 祐子
研究期間 2011-2015
年度 2014
摘要 1. BTHなどの抵抗性誘導剤は、MAPキナーゼ・カスケード(OsMKK10-2、OsMPK6)を活性化し、その結果、WRKY45がリン酸化されて活性化し、病害抵抗性が誘導される。しかし、低温などの環境変化やアブシジン酸(ABA)の存在下では、MAPキナーゼのチロシン脱リン酸化とともにWRKY45の活性も低下し、これが冷害時にいもち病の発生が頻発する原因になっていると推測される。本研究では、チロシン脱リン酸化酵素遺伝子(PTP)を抑制することによって、低温条件でのBTH処理時のいもち病発病が約1/100に低下し、これらの環境要因によるいもち病の被害拡大が防げることを示した。
2. プロモーターの付けかえ等による改良WRKY45導入イネの野外でのいもち病抵抗性を調べるため、畑晩播法による抵抗性検定を行ったところ、「日本晴」の遺伝背景をもつ系統はいずれも強力な抵抗性を発揮した。また、温室での耐病性検定により、いもち病、白葉枯病のいずれに対しても菌系非特異的な抵抗性であることがわかった。一方、WRKY45導入飼料イネ品種の「たちすがた」は、いもち病ほ場抵抗性を有しているため通常の検定法ではWRKY45導入の効果が判別しにくいため、検定法を改良して結果を明確にするか、または「日本晴」WRKY45導入系統を交配親にして複合抵抗性を飼料イネ品種に導入する必要があることがわかった。
3. イネのbHLH型転写因子DPF(Diterpenoid Phytoalexin Factor)は、モミラクトン、ファイトカサン等のジテルペン型ファイトアレキシン(DP)の生合成を制御する転写因子であることを明らかにした。DPFノックダウンイネを作製し、根においてDPの蓄積量及びDP生合成遺伝子12種の発現レベルが顕著に低下していることを示した。DPFによる転写活性化機構については一過的転写活性化実験の結果、DP生合成遺伝子CPS2の上流領域の場合は、ほとんどは単一のN-boxを介していたのに対し、別のDP生合成遺伝子CYP99A2の上流領域の場合は、N-box配列(CACGAG)を含む複数のシス配列の集積により転写活性化が行われていると考えられた。
4. いもち病菌感染時におけるイネの遺伝子発現の変化をマイクロアレイで解析した。いもち病菌P91-15Bを、この菌に非親和性のイネと親和性のイネ系統に噴霧接種し、葉身全体及びレーザーマイクロダイセクション(LMD)によって接種部位近傍のみを含む組織から抽出したRNAをマイクロアレイ解析に供して比較したところ、発現誘導倍率が、葉身全体で高いもの、感染部位近傍で高いものの2つの遺伝子グループが見いだされた。前者に着目して解析を進めたところ、ファイトアレキシン合成系遺伝子群をすべて含んでいることが判明した。スポット接種した葉身での実験から主要なファイトアレキシン合成は接種部位から離れた健全部位ではほとんど起きないことが明らかとなった。
5. ダイズ茎疫病は、ダイズ安定生産の大きな障害となっている。このため、幅広い茎疫病菌レースに対し持続的な抵抗性(ほ場抵抗性)を有する品種の育成が望まれている。茎疫病ほ場抵抗性品種である「フクユタカ」が第15番染色体上に持つ茎疫病ほ場抵抗性候補遺伝子の単離を目指し、候補遺伝子領域を約28 Mbまで絞り込んだ。また、コアコレクションより新たに抵抗性系統を5系統選抜し、QTL解析に向けて組換え自殖系統を育成している。
カテゴリ 育種 いもち病 抵抗性 抵抗性検定 抵抗性品種 凍害 病害抵抗性 品種

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