② 遺伝子組換えカイコの高度利用技術の開発

課題名 ② 遺伝子組換えカイコの高度利用技術の開発
課題番号 2014025647
研究機関名 農業生物資源研究所
研究分担 瀬筒 秀樹
中島 健一
行弘 研司
米村 真之
冨田 秀一郎
岡田 英二
河本 夏雄
内野 恵郎
立松 謙一郎
飯塚 哲也
小林 功
坪田 拓也
笠嶋 めぐみ
協力分担関係 広島大学
研究期間 2011-2015
年度 2014
摘要 1. カイコの卵や全身で導入遺伝子を強力に働かせるhsp90プロモーターの単離に成功し、これと組み合わせて有用な組換えマーカーを開発した。この組換えマーカーは卵でも蛍光タンパク質を強く発現させることができるので、目的遺伝子が導入された組換えカイコの卵を、迅速に正確に選抜できることが示された。
2. 上記1の組換えマーカーを活用し、ゲノム編集技術を用いた簡便・正確・高効率な遺伝子挿入法を開発した。すなわち、人工DNA切断酵素と生物が持つDNA修復機構の一つを利用して、高効率で染色体上の狙った位置に蛍光タンパク質遺伝子を挿入(ノックイン)することに成功した。発現量が高い在来遺伝子の位置に外来遺伝子を挿入することで、遺伝子組換えカイコでの有用物質生産量が劇的に増加することが期待される。
3. カイコはオスの方が繭の品質が良いため、オスだけを飼育して高品質な繭を生産する方法(雄蚕飼育法)の開発が求められている。従来の方法では、特殊な系統の複雑な交配が必要であったが、今回、オス化を決定している遺伝子を操作することにより、メスを幼虫で致死させる方法の開発に成功した。従来の雄蚕飼育法よりも簡便であり、遺伝子組換えカイコの管理においても、野外種のクワコと交雑する可能性があるメスを致死させる方法への応用が期待されている。
4. 遺伝子組換えカイコを用いたさまざまな遺伝子の機能解析と利用法の開発を進めた。1例として、高温になると開口して活動電位を発生するチャネルタンパク質を、オス成虫の触角で発現させたところ、熱刺激によって神経活動が活性化され、組換えカイコがフェロモン源探索行動を示して熱源に近づくことが確かめられた(東大との共同研究)。さまざまな神経細胞を一時的に熱刺激で活性化することにより、脳神経系の機能解明が進むと期待される。また、カイコで細胞死を強力に誘導可能な遺伝子を新たに発見し、特定の組織や神経のみの機能を失わせることも可能となった。これらは、カイコの生物機能を理解し、機能改変して利用するための有用なツールとなる。
5. 遺伝子組換えカイコによる有用タンパク質生産では、産学官からの要望によりさまざまなタンパク質の生産を試み、企業や大学や厚生労働省等による評価が行われ、有用性が示された。また、ヒトインスリン受容体導入した糖尿病モデルカイコを共同開発した。このモデルカイコを用いれば、血糖降下作用をもつ化合物を、生体内での毒性や薬物代謝に対する安定性等の機能評価をしながら効果的に探索でき、糖尿病治療薬開発に利用可能なことを示した。
6. 遺伝子組換えカイコの第一種使用等(拡散防止措置を執らずに行う使用等)での飼育試験を開始した。7月及び9月に、農業生物資源研究所内の隔離飼育区画において、緑色蛍光タンパク質含有絹糸を生産するカイコを合計30,000頭飼育した。遺伝子組換え動物では国内初となる第一種使用等であり、生物多様性影響評価のための知見の集積を進めている。飼育試験に伴うモニタリングで、カイコと近縁野生種クワコとの交雑個体は見つかっていない。第一種使用等による養蚕農家での飼育が可能になれば、飼育コストは現在の遺伝子組換えカイコ飼育の1/10程度になることが見込まれ、大量生産によって組換えシルクの製品化が進むことが期待される。
カテゴリ カイコ コスト フェロモン モニタリング

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