課題名 | ② 作物の感染応答機構の解明と複合病害抵抗性育種素材の開発 |
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課題番号 | 2015027901 |
研究機関名 |
農業生物資源研究所 |
研究期間 | 2011-2015 |
年度 | 2015 |
摘要 | 1.いもち病菌のエフェクタータンパク質に関する知見は極めて限られている。いもち病菌のエフェクター遺伝子RBFは、イネ葉への感染時に発現量が大幅に増加し、感染に必須であることが明らかになった。RBFを破壊したいもち病菌株(rbf)を接種したイネでは、褐変化物質の蓄積を伴う細胞死が誘導され、菌がほとんど増殖しないことがわかった。また、いもち病菌は感染時にRbfタ ンパク質を分泌してBIC構造を作ることでイネの免疫機構を撹乱し、感染を成立させることがわかった。 2.広範な病害に対する抵抗性遺伝子BSR1を過剰発現させたイネは、いもち病及び白葉枯病に極めて強い抵抗性を示すが、玄米が部分的に褐変し発芽率が低下する不具合が認められていた。この不具合を最小化するため、恒常的低発現プロモーター(OsUbi7)及び感染誘導的プロモーター(GST,PR1b)を用いて発現させた結果、玄米色が白色でかつ病害抵抗性を保持した系統が得られた。これらの系統は籾枯細菌病やごま葉枯病にも抵抗性を示した。 3.サリチル酸(SA)経路においてWRKY45に制御されている転写抑制因子WRKY62の機能解析の結果、SAシグナル存在下には、ジテルペン型ファイトアレキシン合成遺伝子群の転写を制御する転写因子DPFの遺伝子の転写をWRKY45?WRKY62ヘテロダイマーとして正に制御すること、また低酸素条件下では、DPF遺伝子の転写を負に制御することを明らかにした。さらにWRKY62は低酸素応答遺伝子の発現にも 関与しており、低酸素条件では正に、SAシグナル存在下では負に低酸素応答遺伝子を発現制御していることを見出した。 4.BTH などの抵抗性誘導剤は、MAP キナーゼ・カスケードの活性化を経て、WRKY45をリン酸化により活性化し、病害抵抗性を誘導する。また、アブシジン酸(ABA)存在下及び低温条件下では、MAPキナーゼのチロシン脱リン酸化とともにWRKY45の活性が低下し、チロシン脱リン酸化酵素遺伝子(PTP)の抑制によって、これらの条件下でのBTH処理時のいもち病発病が低下する。本年度、高塩濃度(250 mM NaCl)でもWRKY45の活性低下によるいもち病亢進及びPTP抑制によるいもち病発病抑制効果が観察され、PTPを介した制御がABAシグナルによって媒介される環境ストレスに共通であることが示唆された。 5.感染応答性プロモーターを用いたWRKY45発現による効果的な複合病害抵抗性の発現には、翻訳エンハンサーの付加による発現タンパク質の増強が必須であることがわかった。また、各種プロモーターの制御下にWRKY45を発現する飼料イネ(たちすがた)について、生物研隔離ほ場にて白葉枯病抵抗性及び生育試験を行い、優良候補系統を選抜した。 |
カテゴリ | 育種 いもち病 ごま 抵抗性 抵抗性遺伝子 病害抵抗性 |