摘要 |
ニホンシカにおける血液生化学的検査の基礎データを得るため、シカ(6頭)頚静脈にカテーテルを装着してできるだけストレスの少ない条件下で採血を行い、キシラジンによる血液学的、生化学的成分の経時的変動、投与量の影響について検討した。結果、キシラジンは血球成分(赤血球、リンパ球、好中球など)値に大きな影響を与えることが確認された。生化学的成分については、グルコースおよび遊離脂肪酸値が大きな変動を示したが、他の成分(GOT、γ-GPT、フィブリノーゲン、シアル酸、総ビリルビン、BUN、Ca、Mg、アルブミン、IgG)の場合、変動率は10%程度であった。キシラジンの投与量による変動は少なかった。抗シカIgG血清を作製し家畜用の気腫疽ワクチンをシカに接種し、反応性をELISAで調べた。結果、シカIgGは市販の抗ヤギIgG血清とも反応し、診断に利用できる可能性が示された。シカの牛用気腫疽ワクチンに対する反応性は低く感染防御を考えた場合は2回以上の接種が必要と思われた。野外および特定養鹿場のシカについて、寄生虫の浸潤状況を調査した。東北地方の野生ニホンシカには、外部寄生虫は、フタトゲチマダニ、キチマダニ、ヤマトダニ、オオトゲチマダニおよびシラミバエが、内部寄生虫は、槍型吸虫、小型ピロプラズマ原虫が高率に寄生していた。未同定の住肉胞子虫の存在も認めたのでさらに調査する必要がある。
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