摘要 |
トマトの青枯病抵抗性機構を明らかにするため、抵抗性台木品種LS-89と感受性品種ポンデローザの植物体内での青枯病菌の動態を比較解析した。その結果、LS-89は青枯病菌に無病徴感染すること、その抵抗性には植物体内での青枯病菌の移行と増殖の抑制、茎組織内での病原細菌の一次木部から二次木部への移行抑制が関与していることを明らかにした。また、このようなLS-89の青枯病菌の移行と増殖を抑制する機構は、他の台木品種についても共通に認められること、高温または高濃度の病原細菌の侵入により崩壊することを示した。透過電顕による細胞学的解析により、ポンデローザでは病原細菌が存在する導管周辺の柔細胞が壊死を起こし、壁孔膜の崩壊、消失が認められた。病原細菌は崩壊した壁孔を通して木部組織全体に広がっていた。一方、LS-89では病原細菌の分布する導管周辺の柔細胞の壊死は少なく、柔細胞の壁孔膜とその周辺の細胞壁の電子密度が高めで、柔細胞と一部導管の壁孔膜およびその周辺の細胞壁に沿って高電子密度物質の集積が認められた。以上から、LS-89の木部組織では、壁孔を通じた導管から他の導管または柔細胞への移行が起こりにくく、特に二次木部への拡散が抑制されていることを明らかにした。これらの知見は抵抗性の評価法の確立、抵抗性品種の育成、発病抑制技術の開発につながる基礎資料となる。
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