課題名 |
(2)農業活動等が物質循環に及ぼす影響の解明 |
課題番号 |
200709655 |
研究機関名 |
農業環境技術研究所
|
研究分担 |
農業環境技術研究所,物質循環研究領域
|
協力分担関係 |
酪農学園大
|
研究期間 |
2006-2010 |
年度 |
2007 |
摘要 |
農業活動が温室効果ガス発生に及ぼす影響について以下の具体的成果が得られた。その結果、中期計画で目標としている栽培・土壌管理技術による温室効果ガス発生抑制効果の定量的評価について、実験とモデルにより多くのデータと知見が得られ、ほぼ予定どおり進行した。また、可搬型温室効果ガスフラックスモニタリングシステムを開発し、特許出願を予定するなど、計測・分析手法についても特筆すべき成果を得た。これらの成果は、農地からの温室効果ガス発生評価・削減技術の開発・普及に貢献するものであり、地球温暖化防止の行政施策に資する所が大きい。1) 国内4地点における田畑輪換試験より、転換畑からのメタン(CH4)及び亜酸化窒素(N2O)発生量の合計値は、水田からのCH4発生量の違いに応じて、連作水田と同等である場合と、顕著に低い場合のあることが明らかになった。2) 黒ボク土における試験では、鶏糞堆肥ペレットからの大きなN2O発生が定量され、施肥管理手法の違いにより高い温室効果能を有するガスが発生する可能性が示された。3) わが国の窒素施用量データベースを作成し、Tier 2手法により都道府県別の農業セクターからのN2O発生特性と全国の発生量の漸減傾向を明らかにした。これにより、広域評価手法の開発に顕著な進展があった。4) 改良されたDNDCモデル(図2-2-5)が、水田におけるわら処理や施肥管理によるCH4発生削減効果の広域評価に有効であることを実験データによる検証から示した。5) 世界で初めて水田での開放系高CO2(FACE)と温暖化を複合させた開放系圃場試験により、CH4発生を計測した。開放系圃場試験とチャンバー実験から、水稲生育期間のCH4発生量が加温により大きく増加することを明らかにした。6) 高頻度・長期測定を可能とする可搬型温室効果ガスフラックスモニタリングシステム開発を行い、夏季の圃場において稼動可能であることを確認した。7) 土壌環境基礎調査より抽出した全国432の水田土壌の炭素蓄積量データを用いて土壌有機物動態モデルの広域的な検証を行い、全体として大きな偏りがないことを確認した。8) 土壌加温実験の詳細な連続測定のシステムが稼働し、土壌呼吸データから土壌炭素画分ごとの分解速度の温度依存性を推定する手法を確立した。また、わが国の土壌有機物動態の全国予測のための炭素・窒素統合モデル作成の一環として、窒素無機化過程をモデル化した。これにより統合モデルの開発が順調に進捗しており、観測データから温度係数を逆推定する手法の確立等の成果はモデルの今後の改良に貢献する。食料等の輸出入等に伴う窒素フロー・ストックについては以下の具体的成果が得られた。その結果、中期計画で目標としている東アジアの広域スケールでの窒素循環及び環境への負荷の解明において有用なデータと知見が得られた。1) 東南アジアの食料需給変動シナリオの下に、現実的な単収の増加による将来のエネルギー作物生産の可能性とそれによる窒素負荷の変化を示した。これは、バイオ燃料と食料の競合問題を考えるための基礎的な情報となると期待できる。2) 施肥による農地からのアンモニア揮散の推定を精緻化し、過大な追肥が揮散の原因となるが、我が国の通常の施肥ではほとんど揮散しないことを示した。東アジアでは肥料からのアンモニアの揮散が大気からの窒素負荷の大きな原因となっており、わが国の農地で得られた施肥と揮散の関係は東アジア農業におけるアンモニア制御のための有用な情報となる。流域レベルでの水質汚染脆弱性については以下の具体的成果が得られた。その結果、中期計画で目標としている浅層地下水を含む土壌圏における硝酸性窒素・リン等の栄養塩類の流出動態解明について予定通り進捗した。1) 少量試料中の硝酸イオンの窒素及び酸素安定同位体比分析法を確立し、脱窒過程での両同位体の濃縮係数の比が1:1に近いことを土壌カラム実験により見出した。この値は、台地・谷津田からなる集水域で見られた両安定同位体比の変化に符合し、脱窒が硝酸イオン濃度低下の主要因であったことを示唆する。このような迅速な分析法を確立したことにより、安定同位体比にもとづく脱窒量推定法の開発に直接つながるものとして、今後の地下水水質の動態解明に貢献が期待される。2) 愛知県阿羅田川流域に表面流出モデルを適用し、傾斜枠試験結果をもとに、河川への懸濁物質及び全リン流出負荷量を予測した。予測値は実測値よりはるかに低く、畜舎など農地以外の負荷源の寄与が大きいと推定された。3) 砂質土壌では浸透流出リンによる水系の富栄養化等の地下水汚染の危険性が高く、流出リンの1~3割を懸濁態が占めることをカラム実験により明らかにした。4) 流域の窒素除去能に関する土地利用連鎖指標として、流出過程での林地通過割合が有効であることがわかった。
|
カテゴリ |
肥料
水田
ストック
施肥
データベース
土壌環境
土壌管理技術
鶏
モニタリング
輸出
|