タイトル | 地下水中硝酸態窒素浄化能からみた林地緩衝帯の必要幅 |
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担当機関 | (独)農業・生物系特定産業技術研究機構 北海道農業研究センター |
研究期間 | 2000~2003 |
研究担当者 |
金澤健二 早川嘉彦 |
発行年度 | 2003 |
要約 | 林地および草地-林地緩衝帯は硝酸態窒素浄化能を有する。しかし、その硝酸態 窒素濃度低下の 1/4 ~ 1/2 は希釈に由来する。地下水中硝酸態窒素濃度を 10mgN/L 以下に 維持するに必要な緩衝帯幅は約 20m である。 |
キーワード | 林地緩衝帯、地下水、硝酸態窒素、希釈 |
背景・ねらい | 農業由来と考えられる地下水の硝酸態窒素の汚染は北海道でも顕在化しつつある。一方、 河畔林はこの様な汚染から河川水質を保全していると推定されるが、その程度は明確でな い。そこで、林地緩衝帯の地下水浄化能を評価し、浄化に必要な緩衝帯幅を検討する。 |
成果の内容・特徴 | 1.本成果は以下の圃場条件で得られた。1994年に標準施肥量の倍量(260kgN/ha)施肥 したトウモロコシ畑(畑地)の斜面(傾斜約2度)下方に約 40m 幅の草地緩衝帯と裸 地緩衝帯を設置し、10 年間管理した。一方、2000 年に草地緩衝帯の一部を林地緩衝 帯にするとともに、同様の畑地を拡張し、その斜面下方に草地-林地緩衝帯(15m 幅 草地と 25m 幅林地)を配置した。地下数mに存在する難透水層まで地下水採取管を埋 設し(図1)、難透水層より地表までの土層に存在する地下水を採取した。2002 年7 月中旬より 2003 年 10 月まで、まとまった降雨後(地下水の大きな移動が起こる)に 計15回、地下水位を計測し、試料採取および水質調査を実施した。更に、一部の地 点では自動採水器による連続観測を行った。 2.林地の乾物生産量(試験前後の刈取で調査)はほぼ草地(刈取で調査)並かやや多い。 窒素収支は、畑地では施与量が持ち出し量を上回り、草地では逆に持ち出し量が多く、 林地も持ち出し量が多い。 3.地下水中硝酸態窒素濃度は畑地の境界で 20 数 mgN/L に達する。その後、裸地を流下 してもその濃度はほとんど低下しないが、林地および草地-林地区を流下すると急速 に低下し、約 20m で飲料水の水質基準である 10mgN/L 以下になる。草地のみを流下 する場合、裸地との中間の値を示す(図2)。 4.この濃度低下に占める希釈の割合を塩化物イオン(吸着されにくいため水の移動の指 標に使われる)の濃度変化(図3)と比較すると、裸地および草地では硝酸態窒素濃 度の低下度合いと塩化物イオンのそれは類似したことから、これらの区における硝酸 態窒素の濃度低下は希釈で概ね説明できる(図4)。このことより 10 年程度負荷を与 えた草地は見かけ上希釈以外の機能を示さないことになる。 5.林地および草地-林地区(図4)では 35m 流下に伴う硝酸態窒素濃度の低下は約 80% に達するが、塩化物イオンでは 20 ~ 40%程度に過ぎない。同様の傾向が草地-林地 区の自動採水器による連続採水試料でも認められる(図5)。 |
成果の活用面・留意点 | 1.本情報は河畔に林地緩衝帯を設置する際に適用出来る。 2.本試験で用いた林地は柳を挿し木して造成した3~4年目の林地である。 境界を100とする割合(%) 硝酸態窒素濃度(mgN/L) 境界を100とする割合(%) 塩化物イオン濃度 (mg/L) |
カテゴリ | 挿し木 施肥 とうもろこし |