土壌生息菌 Pythium oligandrum耐病性誘導物質の特性

タイトル 土壌生息菌 Pythium oligandrum耐病性誘導物質の特性
担当機関 (独)農業・生物系特定産業技術研究機構 北海道農業研究センター
研究期間 2001~2003
研究担当者 西尾善太 
竹中重仁
発行年度 2003
要約 Pythium oligandrum から抽出した細胞壁タンパク質画分(CWP)は、テンサイおよび 小麦に対して耐病性誘導活性を有し、植物体の抵抗性関連酵素の活性増強や細胞壁への
キーワード Pythium oligandrum、耐病性誘導、細胞壁タンパク質、テンサイ、小麦
背景・ねらい 現在の作物病害の防除は抗菌活性を持つ殺菌剤等を用いた薬剤防除が主体である が、今後は自然環境と調和した持続的な農業システム構築の観点から、より環境負荷 低減型の防除法開発が望まれている。土壌生息菌 Pythium oligandrum(PO)は作物根に 定着すると、多くの病害に対して有効に働く防御システムを誘導する。そこで、PO耐病性誘導を利用した防除法を開発するため、PO 菌体より作物の耐病性機能を誘 導する物質を探索する。
成果の内容・特徴 1.耐病性誘導物質として、PO 菌体より細胞壁タンパク質画分(CWP)を抽出した。PO
の CWP は菌株によりその組成が異なり、分子量約 28,000 と 24,0002種の主要タ ンパク質からなるもの(T-type と呼称)と、分子量約 27,0001種の主要タンパク質か らなるもの(S-type と呼称)の 2 種類が存在する(図 1)。これら3つの主要タンパク 質は、互いに類似したアミノ酸配列および糖組成を有する糖タンパク質である。
2.テンサイの根を T-type と S-type CWP 水溶液に浸漬させ、12 時間後に苗立枯病菌 Rhizoctonia solani あるいは Aphanomyces cochlioides を、また小麦の小花に CWP を注射 処理して 24 時間後に赤かび病菌を、それぞれ接種すると、蒸留水(DW)処理区に比べ て、各病害による発病程度が有意に抑制される(表1)。
3.テンサイの根を T-type と S-type CWP 水溶液に浸漬させると、いずれも処理4時 間後に DW 区に比べて植物体のフェニルプロパノイド合成系の鍵酵素であるフェニ ルアラニンアンモニアリアーゼ(PAL)活性の顕著な増加が、テンサイの根部および胚 軸部で認められる(図 2)。また、処理 12 時間後には根部と胚軸部において溶菌酵 素の一種であるキチナーゼ活性の増強も観察されるとともに(図 3)、特に T-type に おいては、病原菌の侵入に対する植物細胞の物理的強化に関与する細胞壁へのフェ ノール物質(主にフェルラ酸)の沈着も高まる(図4)。
成果の活用面・留意点 1.PO CWP は、シロイヌナズナに処理しても防御関連遺伝子を発現させることか
ら、多くの作物種に耐病性を誘導する可能性がある。
2.PO CWPどのペプチド領域に耐病性誘導活性があるのかを特定できれば、多 くの作物種に耐病性を誘導するプラントアクチベータ開発への道が開ける。
カテゴリ 病害虫 環境負荷低減 小麦 立枯病 抵抗性 てんさい 防除 薬剤

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