イブキジャコウソウの効率的栽培法

タイトル イブキジャコウソウの効率的栽培法
担当機関 奈良県農業試験場高原分場
研究期間 1997~1998
研究担当者 今村有里
松倉一弘
発行年度 1997
要約 日本に自生する匍匐性タイム、イブキジャコウソウは、挿し芽後約1ヶ月で95%以上が発根し、鉢上げ可能となる(最低夜温4℃以上)。鉢上げ時に用土1リットルあたり緩効性肥料を2~4g混合し、腰水潅水方式で栽培すると生育が良い。
背景・ねらい  イブキジャコウソウは、匍匐性タイムの1種で日本に自生する山野植物である。香りが良く、春は株が桃色の花に覆われて美しいため、ハーブやグランドカバー植物として中山間地域における産品化が期待できる。 そこで同じ匍匐性タイムで生育旺盛とされるロンギコウリス(Thymus longicaulis )との生育比較を行うとともに、効率的栽培法を検討する。
成果の内容・特徴
  1. 繁殖:種子は微細で取り扱いにくい。挿し芽による増殖では、パーライトとピートモスの等量混合用土を用いた場合、イブキジャコウソウ、ロンギコウリスともに、最低夜温4度前後の保温を行うことにより約1ヶ月で鉢上げ可能な苗が95%以上得られる(表1)。
  2. 施肥量:鉢上げ時には、100日タイプの緩効性肥料(14-12-14)を用いた場合、用土1リットルに対し、イブキジャコウソウで2~4g、ロンギコウリスでは4gを混合すると生育が良い(表2)。
  3. 潅水方法:ベンチにポリマルチを敷き、その上に不織布を敷いて潅水チューブを通した腰水潅水方式(非循環型)では、ミスト潅水の場合に比べて鉢上げ後の生育が優れ、2ヶ月間の生育量は両種ともにミスト潅水の約2倍となる(表3)。
  4. 増殖効率:茎葉1gあたり約10本の挿し穂が得られるので、6月に挿し芽を開始した場合、腰水潅水で栽培することにより、ひとつの挿し芽から9月にはイブキジャコウソウで110本、ロンギコウリスで200本の挿し穂を得ることができる(表2、3)。

成果の活用面・留意点
  1. 挿し芽用土のPHが低いと発根率が低下する。
  2. 1株(株張り約20cm)から20本の挿し穂を採取して6月に挿し芽を開始した場合、鉢上げ時に緩効性肥料を用土1リットルあたり4g混合し、その後腰水灌水で栽培することで、半年後にはイブキジャコウソウで2000鉢、ロンギコウリスで4000鉢のポット苗を得ることが可能である。
  3. 施肥方法、施肥量については、液肥などの利用も含め、さらに検討が必要である。

図表1 210536-1.gif
図表2 210536-2.gif
図表3 210536-3.gif
カテゴリ 肥料 施肥 タイム 中山間地域 繁殖性改善

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