タイトル |
少ない消費エネルギで良好な砕土を行うチゼル付きロータリ耕うん装置 |
担当機関 |
(独)農業・食品産業技術総合研究機構 生物系特定産業技術研究支援センター |
研究期間 |
2002~2006 |
研究担当者 |
紺屋秀之
堀尾光広
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発行年度 |
2007 |
要約 |
ロータリの下後方にチゼルを配し、上層をロータリ爪で、下層をチゼル直刀部およびウイング刃で破砕する複合型の耕うん装置である。通常のロータリと同程度の耕深で作業しても消費エネルギは少なく、砕土性能も高くなるほか、機体振動も軽減される。
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キーワード |
ロータリ耕うん、チゼル、省エネ、砕土性能、耕うんピッチ
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背景・ねらい |
ロータリ耕うん装置は、操作が比較的簡単で砕土性能が良いことから、日本の水田で最も一般的な耕うん整地用機械であるが、所要動力が大きいため高速作業が困難で作業能率が低く、消費エネルギも多い。一方、チゼルなどのけん引式耕うん装置は、ロータリに比べ消費エネルギが少なく高速作業も可能であるが、砕土性能や均平性能、安定した耕深確保などの点でロータリに劣る。そこで、ロータリと同程度の作業精度を維持しつつエネルギを削減することをねらいに、両耕うん方式を組み合わせた複合型耕うん作業機を開発する。
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成果の内容・特徴 |
- ロータリ爪軸の下後方にウイング刃付きチゼルを横方向一列に配置する複合型耕うん装置である。ロータリ部で耕深の8割程度を耕うんし、チゼルウイング刃はその下層の破砕を行う。ロータリは同一断面上に左右各2本のロータリ爪を取り付けるホルダ式である。チゼルは、粗起こし時は土塊の流れを阻害しない爪ホルダ取付け基部後方に、砕土耕時は砕土性向上のため対向するロータリ爪間後方に取付ける。チゼルウイング刃の作用位置は、ロータリ爪回転軌跡最下端より下方1.5~2.5cmにある(図1)。
- 作業速度0.5~0.7m/sで粗起こしをした時の砕土状態と所要エネルギを従来機と比較すると、平均土塊径は13%程度(-8~22%)小さく、けん引エネルギを含む総所要エネルギは10%程度(2~21%)少ない(表1)。
- 作業速度0.5~0.7m/sで、爪軸回転速度を2割程度下げ、耕うんピッチを広げて粗起こし作業をすると、耕うんピッチの狭い従来機よりも高い砕土性を維持しつつ、総所要エネルギは17%程度(2~20%)少なくなる。なお、このように耕うんピッチを広げた場合も、チゼルのウイング刃により下層が破砕されるため残耕を生じることはない(表1)。
- 砕土耕時の砕土性は従来機と同等以上で、総所要エネルギは従来機と同等以下である。
- 粗起こし時の機体振動加速度レベルは、従来機(比較のためウェイトを追加して開発機と同等の重量とした)に比べ1/3程度低く、より高感度な自動耕深制御に対しても安定した作業が可能になると期待される。チゼルを全幅ではなく両端に各1本配置した場合にも同様の振動低減効果がある(図2)。
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成果の活用面・留意点 |
- 本成果の砕土性向上および所要エネルギ低減効果は、ウィング刃付きチゼルを作業全幅に配置し、細粒質グライ化灰色低地土(土性SiC、L)で行った試験結果によるものである。
- 湿潤な土壌や0.7m/sを超える作業速度で粗起こしをすると、チゼル直刀部付近に土壌が付着し所要エネルギの増加を招く場合もあるため、土壌条件および作業条件に応じてチゼル部の着脱を行うことが望ましい。
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図表1 |
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図表2 |
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図表3 |
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カテゴリ |
省エネ・低コスト化
水田
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