タイトル |
高精度土壌呼吸量自動計測システムの特徴と応用性 |
担当機関 |
開発土木研究所 |
研究期間 |
1998~1998 |
研究担当者 |
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発行年度 |
1998 |
要約 |
土壌呼吸量を精度よく自動計測し、かつ遠隔地の計測値を逐次回収できるシステムを開発した。本システムはチャンバー法を基本とし、測定誤差を小さくするため1台のCO2分析器で計測できるようにエアサンプリング切替器により吸入系統を自動的に切替えることを特徴とする。このシステムにより、遠隔地圃場での安定した長期観測が可能である。
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背景・ねらい |
北海道の農業では環境負荷の小さいクリーン農業を目指し、例えば有機肥料、家畜ふん尿の再利用などによる土づくりや循環的農法が進んでいる。作物の根の生育指標として土壌呼吸量の測定は重要な要素であり、また、作物群落での生産と炭酸ガス収支は、生産・環境面での機構解明に必要な事項である。一方、土壌呼吸量は作物群落上での炭酸ガス放出・吸収量と比べオーダーが小さく、高精度で計測する必要がある。さらに、作物の生育期間を通じての長期の観測が可能となるものが望ましい。 このような背景から、土壌呼吸を連続して精度よく測定する装置を開発し、北海道内の草地(別海・枝幸)及びキャベツ畑(芽室)において計測機器の通用性について実際に計測を行った。
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成果の内容・特徴 |
- 計測システム
- 本システムは電話回線とモデムを介し、データロガーに蓄積した観測結果を遠隔地より逐次回収できる。
- CO2分析器へ送るエアサンプリング切替器の開発により、大気中の空気とチャンバー内部の空気を一定時間(180秒)毎に切替える(本切替器は導入ホース内の空気置換を考慮し、サンプリング系統切替え後150秒間のデータを棄却、以後30秒間のデータ平均値をホールドする機能を備えている)。このためCO2分析器が一台ですみ、炭酸ガス濃度差について計器固有の誤差を除き高精度の測定が可能である(図-1)。
- 観測結果
- チャンバーは、牧草地では地上部を短く刈り取り地面を露出させた状態で、キャベツ畑ではうね間に設置した。観測期間中の故障は皆無であった。測定結果(日平均値)は、牧草地では最大14.6mg CO2・100cm2・h-1、キャベツ畑では最大4.4mg CO2・100c2・h-1であった。
- 牧草地では地温の上昇に伴い土壌呼吸量が増加し、時期により値が大きく変化した(図-2)。また、土壌呼吸に占める根の呼吸量を把握する目的で一時的に根を除去し、裸地面に土壌呼吸計を設置した。根を除去した場合に比較して、根が存在する場合の土壌呼吸量は約3倍近くになる。圃場及び観測年は異なるが、牛糞尿スラリー散布区での観測値は無散布区に比べ土壌呼吸量が多い(表-1)。
- キャベツ畑でも地温の上昇に伴い土壌呼吸量が増加するが、収穫後は地温が高いにもかかわらず土壌呼吸量が小さい。したがって、土壌呼吸の増減は地温に支配されるとともに、根の活性等に左右される(図-3)。
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成果の活用面・留意点 |
- 土壌の種類、有機物含量、土壌微生物、作付作物等と土壌呼吸量との関係を明らかにし、土壌呼吸量から土壌中の根の生育状態を評価・判定できるようにする。
- 群落上での炭酸ガス交換量と土壌呼吸量を組み合わせてモニタリングすることにより、作物の光合成環境を的確に把握できる。
- 本システムではチャンバー法を基本としていることから、長期(例えば10日以上)に固定するとチャンバー内での昇温等の弊害が顕れてくるので、露地観測には定期的なチャンバーの移動が必要となる。
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図表1 |
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図表2 |
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図表3 |
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図表4 |
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カテゴリ |
土づくり
肥料
キャベツ
くり
自動計測
モニタリング
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