生理活性物質による感染防御機能増強および牛乳房炎の治療

タイトル 生理活性物質による感染防御機能増強および牛乳房炎の治療
担当機関 家畜部
研究期間 1994~1998
研究担当者 伊藤めぐみ
及川 学
出岡謙太郎
森 清一 
草刈直仁
平井綱雄
発行年度 1999
要約 組換えウシ型顆粒球・マクロファージコロニー刺激因子(rboGM-CSF)がin vitroおよびin vivoの両条件下で牛好中球殺菌機能を増強することが確認された。また、同因子の乳房内注入が乳汁中細菌に対して殺菌効果を有することも示唆された。
背景・ねらい 乳房炎の治療には抗生物質が用いられてきたが、耐性菌の増加が問題になってきており、抗生物質を用いない治療法に関する研究の必要性が増している。近年、白血球機能を増強する作用を有する生理活性物質が数多く報告されてきているが、牛での効果が十分検討されていない物質も多い。本試験では、牛好中球殺菌機能を増強する効果の大きい生理活性物質を検索するとともに牛乳房炎治療効果について検討した。
成果の内容・特徴
  1. ホルスタイン種子牛3頭に水溶性リボフラビン20mg/kgを1回静脈内に投与した結果、好中球CLindexは投与1日後にやや低下した後、投与2ないし3日後に上昇する傾向が認められた。
  2. アンガス種育成牛14頭を5、5および4頭の3群に振り分け、それぞれにジヒドロヘプタプレノール(DHP)0.5、1.0および2.0mg/kgを1回、頚部皮下に投与し、14頭を一括して検定を行った結果、投与2および5日後に投与時に比較して有意(P<0.05)な好中球NBT還元能の上昇が認められた。
  3. 牛好中球浮遊液にrboGM-CSFを0.005、0.05および0.5μg/ml(最終濃度)添加し、無添加区と併せて37℃、5%CO2下で9時間培養し、3時間毎に化学発光能を測定した。その結果、rboGM-CSF0.05および0.5μg/ml添加区がいずれの測定時においても無添加区に比較して有意に高い化学発光最大値を示した(表1)。
  4. ホルスタイン種搾乳牛11頭を4、3および4頭の3群に振り分け、それぞれにrboGM-CSF5.0、2.5μg/kgおよびプラセボ(0.0μg/kg)を1回、頚部皮下に投与し、経時的に好中球NBT還元能を測定した。その結果、rboGM-CSF5.0μg/kg投与群の好中球NBT還元能は、投与24時間後に対照群に比較して有意(P<0.05)に高い値を示した(図1)。
  5. 黄色ブドウ球菌あるいは環境性連鎖球菌の感染が認められた10分房にrboGM-CSF200あるいは400μgを1ないし3回連日注入し、経時的に乳汁中細菌数を測定した。その結果、rboGM-CSFを注入した10分房のうち、5分房については一時的に細菌が消失した。このうち黄色ブドウ球菌の感染が認められた1分房については再度の注入により同菌が消失した。
  6. 残りの5分房については、一時的な細菌数の減少が認められたが、消失はしなかった(表2)。
  7. 以上の成績より、水溶性リボフラビンおよびDHPは牛好中球殺菌機能増強効果を有することが示唆された。また、バキュロウイルス発現系を用いて作製されたrboGM-CSFの牛好中球殺菌機能増強効果が明らかになるとともに、乳房内注入による乳汁中細菌に対する殺菌効果も確認され、抗生物質を用いない乳房炎治療の可能性が示唆された。
成果の活用面・留意点 rboGM-CSFは現在市販されていない。
平成11年度北海道農業試験会議成績会議における課題名及び区分
課題名:生理活性物質による感染防御機能増強および牛乳房炎の治療(研究参考)
図表1 212134-1.gif
図表2 212134-2.gif
図表3 212134-3.gif
カテゴリ 耐性菌 治療法 乳牛

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