タイトル |
ニホンナシ新品種「寿新水」 |
担当機関 |
(独)農業生物資源研究所 |
研究期間 |
1993~1995 |
研究担当者 |
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発行年度 |
1995 |
要約 |
ニホンナシ新品種「寿新水」は、ナシ黒斑病に罹病性である「新水」からガンマ線照射により誘発・選抜されたナシ黒斑病耐病性突然変異系統である。黒斑病耐病性は原品種「新水」よりも明らかに強く、抵抗性品種である「幸水」や「豊水」の防除体系で十分栽培可能である。黒斑病耐病性以外の樹性・果実形質は「新水」と同じである。
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背景・ねらい |
ニホンナシ「新水」は赤ナシの早生品種で、「幸水」よりも7~10日早く成熟し、味は濃厚で品質は優秀であるが、ナシ黒斑病に弱い。これを克服するために、ガンマ線による黒斑病耐病性突然変異の誘発・選抜をはかり、ナシ黒斑病に対する抵抗性を付与した新品種の育成が望まれていた。
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成果の内容・特徴 |
- 昭和62年に「新水」の休眠枝に線量率2.5Gy/h、総線量80Gyで60Coを線源とするガンマ線の急照射を行い、鳥取県園芸試験場に栽植してある「八幸」及び「八雲」に高接ぎをはかり、樹を養成した。ナシ黒斑病菌の生産する粗毒素(AKトキシン)を用いたナシ黒斑病耐病性の検定を開始し、平成元年に粗毒素に反応しない一枝を選抜した。ナシ黒斑病に対する耐病性が優れていることから、平成5年より果樹試験場が実施中のナシ第6回系統適応性検定試験に「ナシ放育2号」の系統名で供試して検討を行った結果、優秀と認められ、平成8年8月21日付けで「ナシ農林18号」として登録・公表された。なお、本品種は、昭和62年から開始された農業生物資源研究所と鳥取県との共同研究によって育成されたものである。
- 圃場での黒斑病の発病程度を観察すると、本品種は原品種の「新水」に比べて明らかに強い。「新水」は、新梢葉や幼果に病徴がみられること、無袋栽培下では黒斑病による落果が多いのに対して、本品種ではわずかな病徴にとどまり落果はみられない。黒斑病耐病性についての黒斑病菌胞子接種(15A株及びML-10E株)及び黒斑病毒素処理による耐病性の程度について調査したところ、本品種は「幸水」や「豊水」のような完全な抵抗性ではなく、「ゴールド二十世紀」程度の耐病性である(表1、2)。
- 樹性や果実特性など黒斑病耐病性以外の形質は、これまでの調査では原品種の「新水」との差異は認められていない(表3)。
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成果の活用面・留意点 |
本品種は、原品種の「新水」とほとんど同じ栽培特性を示すことから、栽培適地は「新水」と同じく我国のナシ栽培地帯の全域である。黒斑病耐病性は、完全な抵抗性ではないが、「ゴールド二十世紀」程度の耐病性であり、抵抗性品種である「幸水」や「豊水」の防除体系で十分対応できる。
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図表1 |
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図表2 |
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図表3 |
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カテゴリ |
病害虫
新品種
高接ぎ
抵抗性
抵抗性品種
品種
防除
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