果樹の量的形質の統計遺伝学的新解析法

タイトル 果樹の量的形質の統計遺伝学的新解析法
担当機関 果樹試験場
研究期間 1996~1998
研究担当者
発行年度 1996
要約 果樹の量的形質について、一つの家系における子の分離が正規分布に従い、かつその分散がどの家系においても同一であるというモデルによって、選抜水準を越える遺伝子型値を持つ子の出現率を予測する方法を開発した。
背景・ねらい
 果樹育種上の重要形質の統計遺伝学的解析には家畜や一年生作物を対象として発達した「遺伝率」などのランダム交雑を前提としたモデルを適用したものが多かった。このモデルは果樹育種集団に適合せず、育種上必要な遺伝情報は十分に得られなかった。
 そこで、果樹育種集団の構造に適合したモデルを開発することによって、望ましい遺伝子型値を持つ子個体の出現率を予測する方法を見いだした。これをカキの数形質に適用し、子個体の分布をほぼ正確に予測することに成功した。
成果の内容・特徴
  1.  一つの交雑に由来する子個体の集団を家系とする場合、一家系における子の分離が正規分布に従い、かつその分散がどの家系においても同一であるというモデルをそれぞれKolmogorov-Smirnovの一試料検定およびBartlettの検定によって行う。このモデルは、検定の結果、カキの熟期、果実重、糖度、ブドウの果粒重について仮定することができる。
  2.  個々の子の表現型値(Pij)について以下のモデルで回帰分析および分散分析を行う。
    Pij=μ+βxi+di+wij
    μ:総平均値xi:i番目の交雑(家系)における平均親値
    β:子の家系平均値平均親値に対する回帰係数di:子の家系平均値の回帰からの偏差
    wij:i番目の家系におけるj番目の子の遺伝および環境効果による家系内偏差(家系内の分離による遺伝効果と環境要因による変動の効果)
     またはβxi(回帰)の代わりにβ’xi+β&F(平均親値と近交係数に対する重回帰:Fは家系の近交係数)を置き換えたモデルを用いる。
  3.  図1のように子が分布すると仮定して、選抜水準を越える子個体の出現率を算出する。カキの熟期、糖度(回帰モデル)及び果実重(重回帰モデル)を解析した結果、diの効果は極めて小さく、家系間の遺伝的な違いは平均親値、または平均親値と近交係数によってほぼ完全に説明され、子の分布は精度高く予測される(図2)。この結果は果実の量的形質の遺伝が極めて単純であることを示唆している。
成果の活用面・留意点
  1.  カキ以外の果樹についてもモデルが適用できれば同様の解析をすることが可能である。
  2.  解析の精度を確保するためには、交配親を繰り返し反復して調査することにより、交配親の遺伝特性を高い精度で把握することが必要である。また、年次変動の補正を行って、誤差を少なくすることが有効である。一方、子個体の方は精度の高い調査は必要でなく、その調査における環境変異の大きさが推定されているだけでよい。
  3.  選抜圃場における環境変異の推定が子の遺伝子型値の分布を推定する上で重要である。
  4.  果実重は平均値と標準偏差が比例するので、対数変換値を用いて解析する必要がある。
図表1 212903-1.gif
図表2 212903-2.gif
カテゴリ 育種 かき ぶどう

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