カンキツグリーニング病の抗血清を用いた微滴法による診断

タイトル カンキツグリーニング病の抗血清を用いた微滴法による診断
担当機関 果樹試験場
研究期間 1997~1997
研究担当者 加納 健
川嶋浩二(国研セ生産利用)奥田誠一(宇都宮大)
大津善弘
中島一雄(国研セ生物資源)
発行年度 1997
要約 ニチニチソウのカンキツグリーニング病罹病葉中肋の篩部組織から得た病原菌の部分純化標品を家兎に5回注射して抗血清を得た。これに、病徴発現したカンキツ葉からおよそ同様に調製した試料 (中肋重量の40倍濃縮)を滴下する微滴法で陽性診断できる。
背景・ねらい
 タイを含む、パキスタンから中国に至るアジアをはじめ、アフリカ、アラビア半島において、カンキツグリーニング病はカンキツ生産の最大の障害となっている。本病は虫媒伝染するため、早期に罹病樹を発見してこれを焼却する対応が必要である。しかしながら、本病の病徴は亜鉛欠乏症に酷似する症状型があることなどから、肉眼診断の手段としての弱点がある。これを補い、確実に診断する技術として、最近PCR診断法が開発されたが、高価な酵素等が必要である。開発途上国等では、安価で簡易な抗血清診断法を適用することは本病防除のために極めて重要である。現在までの報告では、寄主植物成分並びに、CTV等の病原感染特異的タンパク等のものと思われる極めて強い非特異反応のために、使える抗血清が作製されていなかった。
成果の内容・特徴
  1.  グリーニング病原体(GO)を接ぎ木接種し、4週間25-30℃下に置いた後、20-25℃下に1-2 週間置いた罹病ニチニチソウの病徴発現(黄化)した成葉を含む葉すべてにGOが存在することを明らかにした。これらの葉をGOの部分純化に供せる。
  2.  抗血清の作製法は、初めに罹病葉の中肋をセルラーゼ・マセロザイムの高調液で1日処理して篩部組織を取る。その後、高調液中で分画遠心、グルタールアルデハイド固定、蔗糖クッションを用いた分画遠心を行い、部分純化標品を得る。これを家兎に 5回注射して抗血清を作製した。
  3.  診断に用いる試料は、-80℃に保存した罹病カンキツ葉約 50枚の中肋 2g から 2日間の酵素処理により、篩部組織を取り、洗浄する。その組織を磨砕・分画遠心後、最終沈殿を0.85% NaCl溶液 50μl (中肋重量の40倍濃縮)に懸濁する。シャーレ内で、この試料 5μl に抗血清 5μl を滴下し、流動パラフィンで乾燥を防ぐ。37℃ 2時間後に凝集の有無を実体顕微鏡で観察する微適法を行った。中肋重量の40倍濃縮で最も明瞭に凝集する陽性反応が得られた(写真1 のDC 列で強い凝集のため、外周が完全に透明(黒色)になった。)。
  4.  本抗血清は他の病原(CTV弱毒系)感染カンキツ試料と寒天ゲル内拡散法で、病原感染特異的タンパクとのものと思われる弱い反応を示したが、微滴法では反応がなかった。
成果の活用面・留意点
 1ml抗血清で少なくとも1,600試料を診断できる。中肋試料を-80℃に蓄積・保存した後に診断できる。圃場のサンプルでの検討を行えば、予算の少ない途上国、首都から離れた地域に普及できる可能性がある。
図表1 212943-1.gif
カテゴリ 病害虫 乾燥 接ぎ木 防除 その他のかんきつ

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