タイトル |
ブドウルゴースウッド症状から分離されたブドウBウイルスとその遺伝子診断法 |
担当機関 |
果樹試験場 |
研究期間 |
1988~2000 |
研究担当者 |
今田 準
中畝良二
島根孝典
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発行年度 |
1998 |
要約 |
ブドウ枝幹の木質部に生ずる小さな点状又は刻線状のくぼみ、いわゆるルゴースウッド症状を示す「赤嶺」から分離されたひも状ウイルスは、宿主範囲、血清反応、ウイルス外被タンパク質などの諸性状からブドウBウイルス(GVB)と同定され、遺伝子診断法(RT-PCR)による本ウイルス検出技術を確立した。
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背景・ねらい |
近年、山梨県をはじめ各地のブドウ産地で「巨峰」「赤嶺」「甲斐路」等の枝幹部に欧米でrugose wood complexと総称されているウイルス性病害に酷似した症状が発生して問題となっている。そこで、本症状の病原を明らかにするとともに、簡便で再現性の高い、高感度な ウイルス検出法の確立を図る。
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成果の内容・特徴 |
- ルゴースウッド症状(図1)を示す「赤嶺」の緑枝をrugose wood complex(Rupestris stem pitting, Corky bark, Kober stem grooving, LN33 stem grooving)の判別植物 (St. George, LN33, Kober 5BB)に接ぎ木接種した結果、LN33にCorky barkの反応を示した。
- 本症状発現樹「赤嶺」からNicotiana occidentalisに汁液伝染するひも状ウイルス(長さ800nm、幅11~12nm)が分離された。
- 分離されたウイルスの宿主範囲は極めて狭く、3科15種の供試草本植物のうち、病徴を発現したのはN.occidentalisのみで、N.rotundifoliaには無病徴感染した。
- 免疫電顕法で血清関係を調べた結果、本ウイルスはブドウBウイルス(GVB)抗血清と反応したが、ブドウAウイルス(GVA)、ブドウDウイルス(GVD)及びブドウ葉巻随伴ウイルス2(GLRaV-2)の抗血清とは反応しなかった。
- Boscia et al.(1993)の純化方法を改良して得た標品をSDS処理して調製したウイルス外被タンパク質は、分子量が23kDaであり、既報のGVBの値と一致した。
- GVB特異的プライマーを用いたRT-PCRにより本ウイルスが特異的に検出され、病葉葉柄の1,000倍希釈まで検出可能であった(図2)。
- 以上の結果から、本ウイルスはGVBと同定された。
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成果の活用面・留意点 |
わが国のブドウに発生するルゴースウッド症状にGVBが関与していることが明らかとなった。また、本ウイルスを対象としたRT-PCRによる遺伝子診断法は無毒母樹の育成、無毒苗の供給にあたっての保毒検定に利用できる。
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図表1 |
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図表2 |
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カテゴリ |
接ぎ木
ぶどう
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