タイトル |
ワタアブラムシの種内系統の ITS2 領域を用いた類縁関係の解析 |
担当機関 |
果樹試験場 |
研究期間 |
1999~2000 |
研究担当者 |
駒崎進吉
刑部正博
土田 聡
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発行年度 |
2000 |
要約 |
多くの系統に分化しているワタアブラムシのクローンの類縁関係をリボゾーム DNA ITS2 領域の塩基配列に基づいて推定した結果、寄主選好性と関連の深い4つのグループに分かれることが明らかとなった。
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背景・ねらい |
ワタアブラムシは、薬剤抵抗性の発達した難防除害虫である。本種は薬剤感受性に加えて、寄主選好性、生活環型などにも変異のみられる多数の複雑な系統から構成されている。これらの特性と遺伝的な類縁性を解析することによって、抵抗性、寄主選好性、生活環型などの諸特性の変化のしやすさ、起源などを推定できる。これらの知見は、発生予測や、薬剤抵抗性回避技術開発のための基礎的知見となる。
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成果の内容・特徴 |
- 調査した 62 クローンでの ITS2領域は、1016 塩基のうち 21 カ所で変異がみられた。アカネに寄生する No.90クローンはサイズが2塩基大きかった。
- 薬剤抵抗性系統は、系統樹のどの部分にも現れ、多起源であることが推定された。また、この形質は比較的変化しやすい形質であることも推定された。
- ムクゲを冬寄主とする系統は、一つのまとまりを形成し、ミカンとナシを選好するクローンとの類縁関係が近かった(グループ1)。
- アカネに寄生するクローンは、別の遺伝的に遠い関係を示した。これに比較的近縁なのはキュウリを選好する系統で、ミカンやナシにも寄生した(グループ2)。
- ナスとキュウリに選好性を持つグループはミカン、ナシを選好する系統と近縁であった(グループ3)。
- ナスを選好する系統も、遺伝的に近縁なグループを形成し、これにも果樹を選好するクローンが含まれた(グループ4)。
- 以上のことから、キュウリに対する寄生性を持つ系統は単系統的であるが、ミカンやナシへの寄生性は、それぞれのグループで別に発達したことが推定される。
- 生活環型は、系統樹の分岐とは違った現れかたをした。しかし、完全生活環型 II は比較的まとまったグループ内でのみ見られた。
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成果の活用面・留意点 |
- 薬剤抵抗性は比較的変化しやすい形質であると推定されることから、薬剤の連用は抵抗性の早期発達を促すことが考えられる。
- 果樹に発生するワタアブラムシは、ナス、キュウリに寄生している個体とも関連性を持つので、周辺の野菜での発生が果樹での発生に影響する。虫害抵抗性品種の選抜には寄主選好性の違う系統に関する検討が必要である。
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図表1 |
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カテゴリ |
病害虫
害虫
きゅうり
抵抗性
抵抗性品種
なす
防除
薬剤
わた
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