タイトル |
カンキツウイロイド(CVd)-I-LSSおよびCVd-OSの塩基配列 |
担当機関 |
果樹試験場 |
研究期間 |
1995~1999 |
研究担当者 |
伊藤隆男
家城洋之
尾崎克巳
伊藤 伝
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発行年度 |
2001 |
要約 |
国内のカンキツから、カンキツベントリーフウイロイド(CBLVd:別名CVd-I)の特殊な変異株であるカンキツウイロイド(CVd)-I-LSS(low sequence similarity)と、新種のCVd-OSを発見し、それぞれの全塩基配列(ともに約330塩基)を決定した。
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キーワード |
カンキツ、ウイロイド、塩基配列、新種、変異株
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背景・ねらい |
ウイロイドは遺伝子RNAのみからなる病原体であり、早期検出のためには、その塩基配列を基にした遺伝子診断が、最も簡便で確実である。これまで、国内のカンキツに感染するウイロイドには5種類が知られており、その全塩基配列も明らかとなっている。しかし、その5種を検出する目的で行った遺伝子診断では検出できないウイロイド様RNAがあることから、新種または新変異株の存在を推察し、その塩基配列決定などの性状解析を行った。
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成果の内容・特徴 |
- ポリアクリルアミドゲル電気泳動法により国内のカンキツ(試料名VF10-SおよびOS)から、既知の5種カンキツウイロイドと異なる2つのウイロイド様RNAをそれぞれ検出し、逆転写ポリメラーゼ連鎖反応(RT-PCR)などにより全塩基配列をそれぞれ決定した。
- 精製したそれらのウイロイド様RNAを、エトログシトロン系統アリゾナ861-S1に切り付け接種したところ、それぞれ病徴を発現した(図1、2)。このことにより、それら2つのウイロイド様RNAがウイロイドであり、カンキツに病原性をもつことが確認された。
- 試料VF10-Sより得られたウイロイドは、全塩基配列が327塩基からなり、既報のウイロイドではカンキツベントリーフウイロイド(CBLVd:別名CVd-I)に最も塩基配列の相同性が高く約84%であった。ウイロイドの分類では90%以上の全塩基配列相同性が同種であるための条件とされているが、本ウイロイドは、CBLVdと同じカンキツに感染し、CBLVdと明確に区別できる生物学的性質が不明であるため、現時点ではCBLVdの特殊な変異株と考え、CVd-I-LSS(low sequence similarity)と名付けた(図3)。
- 試料OSより得られたウイロイドは、全塩基配列が330塩基からなり、既報のウイロイドではカンキツウイロイドⅢ(CVd-Ⅲ)に最も塩基配列の相同性が高かったものの、その値は約68%とかなり低いものであった。従って、既報の種に当てはまらない新種ウイロイドであると考えられ、試料名にちなんでカンキツウイロイドOS(CVd-OS)と名付けた(図4)。
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成果の活用面・留意点 |
- CVd-I-LSSとCVd-OSの生物検定は、他のカンキツウイロイドと同様に、エトログシトロン系統アリゾナ861-S1を用いることによって可能である。
- CVd-I-LSSとCVd-OSの発見は、カンキツウイロイドの多様性に対する理解を深めるものであり、一般栽植カンキツに対するカンキツウイロイドの病原性などを評価していくうえで、重要な知見となる。
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図表1 |
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図表2 |
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図表3 |
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図表4 |
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カテゴリ |
その他のかんきつ
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