温州萎縮ウイルスの新たな近縁ウイルス:ヒュウガナツウイルス(仮称)

タイトル 温州萎縮ウイルスの新たな近縁ウイルス:ヒュウガナツウイルス(仮称)
担当機関 (独)農業・生物系特定産業技術研究機構 果樹研究所
研究期間 1997~2000
研究担当者 伊藤隆男
岩波徹(九州沖縄農研)
家城洋之
下村克己(福岡農総試)
清水伸一(愛媛果試)
伊藤伝
発行年度 2003
要約 温州萎縮ウイルス(SDV)抗血清と反応する日向夏(ヒュウガナツ)よりウイルスを分離してその分子生物学的性状を解析したところSDVの新たな近縁ウイルスであることが明らかとなったため、ヒュウガナツウイルス(HV)と仮称する。
キーワード カンキツ、温州萎縮ウイルス、分類、新ウイルス
背景・ねらい
温州萎縮ウイルス(SDV)及び近縁ウイルスグループには、他にカンキツモザイクウイルス(CiMV)とネーブル斑葉モザイクウイルス(NIMV)が存在し、互いに血清学的性状や分子生物学的性状が異なっていることが知られている。SDV抗血清と反応する日向夏(ヒュウガナツ)についてウイルスを分離しその分子生物学的性状を解析して、SDV、CiMV及びNIMVとの異同を明らかとする。
成果の内容・特徴
1.
SDV抗血清と反応するヒュウガナツについて、汁液接種により増殖したPhysalis floridanaからの純化試料などからゲノムRNAの一部をクローニングして、いくつかそのcDNAを得ている。それらのcDNAについて塩基配列を解析した結果、RNA1とRNA2のそれぞれの3’末端領域にあたる1,306塩基と2,160塩基が得られたことが確認されている。
2.
RNA1由来の1,306塩基はRNA依存性RNAポリメラーゼの一部を含み、RNA2由来の2,160塩基は外被タンパク質の全部を含むと考えられ、それらのアミノ酸配列相同性は他のSDV-RVとそれぞれ78.3~84.0%と及び76.9~80.7%しかない。外被タンパク質のアミノ酸配列又はRNA2の3’末端非翻訳領域の塩基配列を基にした系統樹解析ではSDV、CiMV及びNIMVのいずれとも均等に離れており、これらと異なる新種であると考えられる(図1)。
3.
SDV-RVの検定植物である白ゴマには他のSDV-RV同様の病徴を示し、血清学的にも分子生物学的にもSDVと深い関連があると考えられる。SDV-RVの新種であると考えられるため、ヒュウガナツ由来であるが特徴的な病徴を引き起こすかどうかは不明であることから、ヒュウガナツウイルス(Hyuganatsu virus, HV)とだけ仮称する。
成果の活用面・留意点 1.
SDV-RVの検出にはエライザなどの血清診断が一般に行われるが、NIMVがSDV抗血清には反応しないことや検出限界による検定漏れ、さらに擬陽性の問題などから、RT-PCRのようにより高感度な遺伝子診断を行う必要性が非常に高い。今回得られた新ウイルスの塩基配列の情報はその開発に大いに役立つ。
2.
HVが実際の栽培カンキツ樹に対してどのような病原性を示すのかは今だ不明であり、今後明らかにしていく必要がある。
図表1 213108-1.jpg
カテゴリ ごま 栽培技術 ネーブル 日向夏 その他のかんきつ

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