リンゴにおける収穫後の果実軟化の遺伝

タイトル リンゴにおける収穫後の果実軟化の遺伝
担当機関 (独)農業・食品産業技術総合研究機構 果樹研究所
研究期間 2001~2007
研究担当者 阿部和幸
岩波 宏
古藤田信博
森谷茂樹
発行年度 2007
要約  収穫後の果実硬度の変化に回帰式をあてはめることで、軟化の程度が軟化速度として数値化されるため、品種による違いを客観的に評価できる。この軟化速度の遺伝率は高く、軟化しにくい個体を得るには、軟化しにくい品種を交雑親に用いることが必須である。
キーワード リンゴ、日持ち性、回帰式、軟化速度、遺伝率
背景・ねらい
 収穫後の軟化は日持ち性を決定する主要な要因である。軟化のしやすさは品種により大きく異なるが、軟化のしやすさがどのように遺伝するか未知であるため、日持ち性の優れる品種の効率的な育成の大きな障害となっている。
そこで、軟化のしやすさを数値化して比較するための指標を開発するとともに、その指標を用いて軟化の遺伝を明らかにする。

成果の内容・特徴 1.温度20℃湿度80%の貯蔵条件(日持ち条件)下では、ほとんどの果実は収穫後すみやかに軟化するが、硬度が減少する期間や程度は品種により異なり、ある時点まで硬度が減少するとそれ以上は硬度の低下が緩慢になる品種も存在する(図1A-B)。しかし、これらの品種でも、収穫時の硬度の20%までは、硬度は直線的に減少する。
2.収穫時を基準とした相対硬度の低下が20%を超えた時点までの貯蔵中の硬度変化に直線回帰式をあてはめると、得られる回帰係数は軟化速度を表す(図2)。この軟化速度は、同一品種でもサンプリングする年次により変動するが、品種と年次の交互作用が小さいため、同じ年次で比較すれば、年次によって品種間差の評価が異なる可能性は低い。また、台木や樹齢の違いや収穫時期の2週間程度のずれも、同一品種であれば軟化速度の変動は小さいことから、この回帰係数で表される軟化速度は環境変異に対して安定した形質であると言える(表1)。
3.交雑実生集団において、両親の軟化速度の平均(中間親値)とその交雑により得られた子どもの軟化速度の平均(家族平均値)との間には高い相関がある(図3)。中間親値に対する家族平均値の回帰から(親子回帰)から推定した遺伝率は0.92であり、親の軟化速度の値はほとんどそのまま子に伝わる。
4.以上のことから、リンゴ育種において収穫後に軟化しにくい個体を得るには、軟化しにくい品種を交雑親に用いることが必須である。
成果の活用面・留意点
1.交雑親に用いようとする品種の軟化速度を知ることで、後代実生の軟化速度の平均値が予測できるため、育種の効率化につながる。
2.現在国内で栽培されている主要な品種を用いて解析したため、リンゴの品種改良に取り組む全国の研究機関で適用できる。
3.貯蔵中の硬度変化は収穫時から5日おきに20日目まで測定すればよい。収穫時から硬度が20%以上減少した時点までに直線回帰式をあてはめる。20日間貯蔵しても収穫時の硬度から20%以上硬度が減少しない場合は、20日目までの硬度変化に直線回帰式をあてはめる。
図表1 213206-1.gif
図表2 213206-2.gif
図表3 213206-3.gif
図表4 213206-4.gif
カテゴリ 育種 台木 品種 品種改良 りんご

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