ジャガイモ疫病菌の系統変動による圃場抵抗性品種「マチルダ」の早期発病

タイトル ジャガイモ疫病菌の系統変動による圃場抵抗性品種「マチルダ」の早期発病
担当機関 (独)農業技術研究機構 北海道農業研究センター
研究期間 1996~2000
研究担当者 加藤雅康
高橋賢司
佐藤章夫
島貫忠幸
内藤繁男
発行年度 2001
要約 ばれいしょの疫病圃場抵抗性強品種の「マチルダ」は、導入(1993年)当初と比較して発病時期が早まった。これには、「マチルダ」に対する病原力が強い疫病菌のA系統が1990年代後半に北海道で優占するようになったことが関与している。
キーワード ジャガイモ疫病、ばれいしょ、圃場抵抗性、菌の系統、マチルダ
背景・ねらい
防除のために殺菌剤散布回数の多いジャガイモ疫病に対して、圃場抵抗性の強い品種の栽培によって散布回数を削減することができる。一般に、圃場抵抗性はレース非特異的で、その抵抗性を打破する系統は出現しにくいと考えられている。北海道では、1993年に圃場抵抗性が強い「マチルダ」が減農薬栽培に向く品種として奨励品種となった。しかし、1998年頃から「マチルダ」の発病時期が早まった。そこで、早期発病の要因を解明する。
成果の内容・特徴
1.
疫病菌の系統は、1990年代前半に交配型A2のJP-1系統が高度に優占していたが、1990年代後半に交配型や酵素多型などの点でJP-1系統とは異なるA、B、C、D系統が認められるようになった。北海道における優占系統は1990年代後半にJP-1系統からA系統へと変化した(図1)。「マチルダ」の主要栽培地域である北海道十勝地方では、1996年まではJP-1系統のみが分離されたが、1997年に十勝地方北部でA系統が見つかり、2000年までその割合は増加した。
2.
1997年に北海道農試圃場で「マチルダ」から分離された疫病菌菌株はA系統と同じ交配型A1のみであったが、それ以外の品種から分離された菌株はJP-1系統の特徴であるA2型であった(表1)。
3.
「マチルダ」の小葉にJP-1系統、A系統およびB系統の遊走子のう懸濁液を滴下接種すると、いずれの系統も親和性の病斑を形成する(表2)ので、現在分布している主要系統に対して「マチルダ」はレース特異的抵抗性を保有していない。
4.
遊走子のうを葉に噴霧接種すると、「マチルダ」ではJP-1系統はほとんど病斑を形成しないが、A系統は高率に病斑を形成する(表3)。一方、「男爵薯」、「コナフブキ」では、A、JP-1系統とも高率に病斑を形成する。どちらの系統も病斑形成率は「男爵薯」や「コナフブキ」より「マチルダ」で低い。
5.
以上のことから、「マチルダ」の発病時期が早まった原因には、従来優占していたJP-1系統より「マチルダ」に対する病原力の強いA系統が1990年代後半に北海道で優占するようになったことが関与している。
成果の活用面・留意点
1.
圃場抵抗性品種の抵抗性レベルは疫病菌の系統によって変化するので、系統の変動と抵抗性レベルの低下に注意を払う必要がある。抵抗性レベルが低下した場合には的確な防除を行う必要がある。
2.
「マチルダ」の抵抗性はいぜんとして圃場抵抗性中程度の「コナフブキ」や「農林1号」より強いレベルにある。 
平成13年度北海道農業試験会議(成績会議)における課題名および区分
「ジャガイモ疫病菌の系統分化による圃場抵抗性品種の罹病化とその対策」(普及推進)
図表1 213263-1.gif
図表2 213263-2.gif
図表3 213263-3.gif
図表4 213263-4.gif
カテゴリ 病害虫 抵抗性 抵抗性品種 農薬 ばれいしょ 品種 防除

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