タイトル |
尿素によるでん粉粕のカビ抑制と肉牛への飼料利用 |
担当機関 |
北海道立畜産試験場 |
研究期間 |
2004~2006 |
研究担当者 |
杉本昌仁
阿部英則
齋藤早春
左 久
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発行年度 |
2006 |
要約 |
でん粉粕の表面に100g/㎡の尿素を散布するとカビの発生を抑制できる。0.5%の尿素を混合して調製するとカビ抑制だけではなく、ルーメン内への窒素供給や飼料の分解性が高まる。肥育前期では、乾物ベースで濃厚飼料中20%までを目安に飼料利用できる。
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キーワード |
でん粉粕、カビ、尿素添加、肉用牛、濃厚飼料
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背景・ねらい |
でん粉粕は飼料自給率向上の一策として期待される。とくに、でん粉含量が20%という特性を活かして肥育牛用飼料の一部を代替できる可能性がある。しかし水分含量が高いため貯蔵中にカビが発生しやすく、また蛋白質含量が低いためその補給を考える必要がある。そこで、でん粉粕に対する尿素の添加がカビの抑制および栄養価改善に対する効果を明らかにする。
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成果の内容・特徴 |
- 可溶性の糖類を多く含む粗飼料をアンモニア処理すると4-メチルイミダゾール(4MI)と呼ばれる毒性物質が生成する場合があるとされるが、でん粉粕への尿素添加による4MIの生成は認められない(表1)ため飼料として利用することが可能である。
- でん粉粕の表面1平方メートルあたりに尿素を100g添加し、速やかに密封し、サイレージ調製すると、でん粉粕からのカビ発生が抑制できる(図1)。
- CP含量を約12%にまで高めるためにでん粉粕に対して原物重量比0.5%の尿素を混合すると表面散布と同様にカビ抑制効果が認められる。
- でん粉粕に0.5%の尿素を混合添加すると、粗タンパク質含量が増加し、サイレージ貯蔵中に可溶性成分割合が増加し、給餌2時間後ではルーメン内の酢酸割合が低下しプロピオン酸割合が増加する(図2)。
- 配合飼料の2割をでん粉粕サイレージで置き換えて黒毛和種を30か月齢まで肥育しても平均で420kg以上の枝肉重量が確保できる。BMS No.や歩留基準値など格付成績は配合飼料で肥育した対照区と同等である(表2)。でん粉粕および肥育用配合飼料の単価をそれぞれ5円および44円として試算すると飼料費は約69,000円節減できる。
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成果の活用面・留意点 |
- バレイショでんぷん工場に近在する肉用牛肥育農家においてでん粉粕を飼料利用する上で有効な技術情報である。
- 尿素添加でん粉粕のサイレージ調製に際してはサイレージ調製の原則を守ることが必要であり、取り出し開始後もシート被覆を行うこととする。
- 配合飼料の一部をでん粉粕サイレージに置き換えて肥育牛に給与する場合、その代替率を20%以下(乾物ベース)で利用することが望ましい。
- 尿素は「飼料の安全性確保及び品質の改善に関する法律」の指定添加物であるため、関係法令を遵守して取り扱う必要がある。
- ジャガイモ塊茎褐色輪紋病ウイルス(PMTV)を媒介するジャガイモ粉状そうか病菌は耐久体を形成し、他の病原菌と比較して熱などに対する耐久性が高いおそれがあることから、病原を拡散させないため、でん粉粕を給与した牛のふん尿堆肥は草地に還元し、当面畑地への還元を避ける。
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図表1 |
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図表2 |
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図表3 |
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図表4 |
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カテゴリ |
肉牛
ばれいしょ
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