タイトル |
環境保全と良質粗飼料生産のための乳牛飼養可能頭数算定法 |
担当機関 |
根釧農試 |
研究期間 |
2004~2006 |
研究担当者 |
阿部英則
岡元英樹
三枝俊哉
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発行年度 |
2006 |
要約 |
家畜ふん尿の肥効に基づいて、地域、土壌、作物ごとに乳牛1頭当たりのふん尿還元必要面積を設定し、ふん尿還元可能な圃場ごとの飼養可能頭数を積算することにより、適正な養分循環に基づく乳牛飼養可能頭数を酪農家ごとに算出できる。
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キーワード |
家畜ふん尿、環境保全、飼養可能頭数、酪農、良質粗飼料生産
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背景・ねらい |
北海道の酪農経営に対し、環境保全に配慮した経営規模の指標となる飼養可能頭数を設定する場合、環境保全の目標値に関する考え方が地域間で異なり、一律な合意が困難である。一方、北海道における草地の施肥管理は、不必要な養分を施用しないことで、良質粗飼料の生産性確保とともに、余剰養分の低減により養分流出の回避を図ることを基本としている。そこでこの考え方に基づき、圃場ごとにふん尿還元量の上限値を求め、それらを排泄する乳牛頭数を飼養可能頭数とする。現状では、粗飼料生産対して余剰とならないふん尿量を産出するこの頭数を飼養可能頭数とすることが、最も合意しやすい考え方である。
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成果の内容・特徴 |
- 酪農家の乳牛飼養可能頭数(成牛換算、頭)を次のように算定する。
1)ふん尿還元可能な圃場に対し、各圃場面積を、乳牛の養分排泄量の原単位と肥効率および北海道施肥標準によって設定された乳牛1頭当たりのふん尿還元必要面積(表1)で除し、圃場ごとの乳牛飼養可能頭数を得る。各圃場の乳牛飼養可能頭数を積算して、その酪農家の乳牛飼養可能頭数(頭)とする(表2)。 2)放牧牛を有する場合、排泄ふん尿は放牧・兼用草地と貯蔵粗飼料用の採草地に還元できる。放牧可能頭数は、北海道の放牧試験成果と放牧・兼用草地面積から求める(放牧・兼用草地面積÷0.5ha/頭)。その他の飼養可能頭数は、放牧牛が冬季舎飼日数に応じて摂取する粗飼料を得るための採草地面積(0.2~0.3 ha/頭×放牧頭数)と放牧・兼用草地面積を全圃場面積から差し引き、残り圃場に対して上記1)の計算を行って求める(表2)。 - 北海道の酪農地帯にはふん尿還元困難な圃場があり、現状では必要面積を確保しにくい。還元可能な圃場面積を拡大し、必要面積を確保するためには、遠隔地へのふん尿還元や傾斜地における環境保全的な放牧利用の推進などの取り組みが必要である(表3)。
- 本算定法で得られた乳牛頭数や耕地面積などの数値は、飼養可能頭数を超過した酪農家に対し、a.ふん尿未還元農地へのふん尿還元、b.土地利用法の再検討、c.新たな土地の取得、d.ふん尿の周辺農家等系外への搬出、e.飼養頭数削減などの対策の選択に有効である。
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成果の活用面・留意点 |
- 本成果は、個々の酪農家が環境保全と良質粗飼料生産の観点から、耕地面積と飼養頭数との関係を適正化するための指標となる。
- 本算定法には、圃場施用時の窒素揮散を除き、養分損失を見込んでいない。
- 草地の草種構成や土壌の化学性等の変化に対応した毎年の土地管理に対しては、北海道施肥ガイド等既存の施肥対応技術を活用する。
- 水系に隣接するなど、環境に対する脆弱性を有する圃場に対しては、緩衝帯の設置など既往の留意事項を遵守し、ふん尿還元圃場面積を無理に確保しないよう配慮する。
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図表1 |
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図表2 |
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図表3 |
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カテゴリ |
経営管理
傾斜地
飼料用作物
施肥
乳牛
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