タイトル |
雪ムロ貯蔵による米の付加価値向上効果 |
担当機関 |
新潟県高冷地農業技術センター |
研究期間 |
1996~1996 |
研究担当者 |
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発行年度 |
1996 |
要約 |
雪ムロ貯蔵した米は消費者の食味評価が高く、高価格での購入意向があることから付加価値商品として流通する可能性がある。貯蔵および流通経費は既存の低温倉庫貯蔵米と同等であり、所得向上効果は高い。
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背景・ねらい |
中山間地農業の振興が急務とされる中で、高付加価値農業を実現するための貴重な地域資源として積雪寒冷地帯では雪が見直されている。これを安価でクリーンな冷熱源として貯蔵施設等に活用し、農産物の有利販売やコスト低減に取り組む動きがある。このうち、氷室式大型雪ムロ貯蔵施設(新潟県中魚沼郡,JA津南町設置)で実施した米貯蔵試験をもとに、その経済性や商品流通の可能性を明らかにしながら、付加価値向上効果を測定する。
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成果の内容・特徴 |
- (1)首都圏の一般消費者を対象に実施した雪ムロ貯蔵コシヒカリの食味求評アンケートでは、「今まで食 べたおいしいご飯」との比較で、7段階評価のうち上位2つの「うまい~かなりうまい」に7割の回答が集中し、高い評価を得ることができた(図1)。
- (2)米を雪ムロ貯蔵することでコストアップが見込まれる包装資材等の経費を見込み、小売価格の設定を 750円/kgとして購入意向の求評アンケートに提示した。これに対し、「自家用に継続して購入したい」が7.2%、「時期を考慮しながら自家用に時々購入したい」とするものが36.2%あり、雪ムロ貯蔵米の販売は実現性が高いことが伺われた。なお、購入意向別の回答者世帯の概況集約により、専門小売店を中心とした販売ルートを用い、商品説明の際には貯蔵形態とともに産地や品種を積極的にPRすることが、販路拡大に有効とみられた(表1)。
- (3)雪ムロ、および同程度の床面積を持つ米低温倉庫とで貯蔵コストを比較した場合、米1tあたりでは 差がなかった(表2)。これは、雪ムロ施設建設時の初期投資額は相対的に大きいものの、耐用年数を長くとれることから減価償却費は低減されるとともに、光熱費の節減が図られるためである。
- (4)現在JA津南町は、低温倉庫貯蔵の米を「名水の恵」というブランドで、首都圏へは7,000円/10kgで 販売している。これに対し、雪ムロ貯蔵米が750円/kgで販売可能であれば、10kg換算で423円の付加価値を新たに獲得することができる(表3)。
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成果の活用面・留意点 |
- (1)多雪寒冷地帯において適用が可能であり、良質米産地ほど有利となる。
- (2)生鮮食品的な扱いでの貯蔵・流通となるため、販売の本格化にあたっては品質保持対策や様々なトラブルを想定した、「流通マニュアル」の作成が必要である。
- (3)今後さらに建設が進むとみられる大型雪ムロ貯蔵施設への有望な貯蔵品目の一つであり、年間の貯蔵プログラムに組み込むことで利用実績向上に貢献する。また、「こだわりある米」を求める消費ニーズに合致し、差別化を図りたい米産地にとっては有力な商品アイテムとなりうる。
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図表1 |
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図表2 |
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図表3 |
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図表4 |
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カテゴリ |
馬
くり
高付加価値
コスト
中山間地域
低コスト
品質保持
品種
良食味
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