土壌被覆培養法の開発による土壌の微生物性簡易診断

タイトル 土壌被覆培養法の開発による土壌の微生物性簡易診断
担当機関 宮城県農業センター
研究期間 1998~1998
研究担当者
発行年度 1998
要約 土壌の微生物性の簡易診断法として、白紋羽病菌を植え込んだ寒天培地を土壌で被覆して培養し、菌叢生育抑止率を指標とする土壌被覆培養法を開発した。本法は特殊な分析装置を必要とせず、短期間で土壌の微生物性が評価できる。
背景・ねらい 連作栽培における土壌病害の多発は、土壌微生物相の単純化による発病抑止力の低下が関与する。また土壌消毒直後は土壌微生物も死滅するため、土壌の発病抑止力も一時的に消失する。しかし、生産現場においては発病抑止に関わる土壌の微生物性をモニターする手段がない。土壌病害の発生を予測して回避するには、簡易で短期間に判定できる微生物性診断法が必要である。そこで、多様な微生物群集は相互作用により特定の菌の生育を抑制するであろうと考え、土壌中を伸長し宿主に感染する白紋羽病菌を指標にした土壌被覆培養法を考案し、その実用性を検討した。
成果の内容・特徴
  1. 馬鈴薯ブドウ糖寒天培地上に、コルクボーラー(径5mm)で打ち抜いた白紋羽病菌の菌叢寒天片を置く。24時間後に海砂(15~20
    mesh)で10倍に希釈した供試土壌と同殺菌土壌のそれぞれで被覆して(図1)、
    3~5日後にシャーレ裏面から菌叢生育を計測する。菌叢生育抑止率は殺菌土壌での菌叢生育に対する供試土壌での生育割合で示す(図2)。
  2. 土壌の細菌群集の炭素源利用能による多様性指数が約2,000、1,200、125である土壌での菌叢生育抑止率は、夫々75.3%、62.2%、36.5%であり、多様性が高いほど菌叢生育抑止率も高い(表1)。
  3. ハス腐敗病の無発圃場では、細菌群集の多様性が高くて菌叢生育抑止率も高い。一方、多発圃場では、細菌群集の多様性、菌叢生育抑止率ともに低い(表2)。
    また、ハス腐敗病常発地である河北潟干拓地圃場の土壌では、菌叢生育抑止率が低く、腐敗病の発生しない後背地圃場の土壌では菌叢生育抑止率が高い値を示す(表3)。
  4. 以上より、土壌被覆培養法による菌叢生育抑止率によって、土壌の微生物性(細菌群集の多様性)を診断できる。この方法によってハス腐敗病の発生が予測できる。
成果の活用面・留意点
  1. 土壌被覆培養法による菌叢生育抑止率は、土壌の有する発病抑止力の相対的評価の指標になるが、さらに菌叢生育抑止率の絶対値と発病程度の関係を明らかにする必要がある。
図表1 214287-1.gif
図表2 214287-2.jpg
図表3 214287-3.gif
図表4 214287-4.gif
図表5 214287-5.gif
カテゴリ 肥料 簡易診断 土壌消毒

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