水田土壌の実態と汎用化を考慮に入れた土壌施肥管理対策の方向

タイトル 水田土壌の実態と汎用化を考慮に入れた土壌施肥管理対策の方向
担当機関 福井県農業試験場
研究期間 2000~2000
研究担当者
発行年度 2000
要約 農作物の生産安定や品質向上対策に役立てるため、水田土壌の実態調査を実施した。その結果、乾田率が高まるなど汎用化が進む一方で、浅耕化や石灰減少に伴う低pH、燐酸富化などの問題点が明らかになり、今後の水管理のあり方や施肥管理および土づくり対策等に活用することができる。
背景・ねらい 米余りと産地間競争の激化および米価低迷を背景に、水稲をはじめ水田畑作物の生産安定と品質の向上が求められている。その対策の一環として、生産基盤である水田土壌の生産力を明らかにし、汎用化を前提とした適切な土壌・施肥管理対策に資するため、福井県下全域の水田を対象に土壌実態調査を実施する。
成果の内容・特徴
    土壌断面調査を5haに1点の割合(約7500点、農業改良普及センタ-担当)で行い、その内、土壌分析を約2700点実施した。その結果を昭和49年以前の調査データ(地力保全基
    本調査)と比較し、この間の土壌変化と今後の土壌施肥管理対策について明らかにした。
  1. 湿田が全県で約半分に減少し、乾田が増加している。特に、前回の調査で湿田が多い地区ほどこの傾向が強い(図1)。これは、汎用化水田の整備率が高まったこと(H10:80.6%)や集団転作の影響によるものと推察される。近年、特に乾田において、ひび割れを引き起こすような強い中干しのため、登熟期の水管理を困難にする傾向にあるので、土壌タイプに応じた水管理に努める必要がある。
  2. 作土深は前回の調査時に比べ浅くなった(図2)。これは、乾田化や機械化による鋤床層の圧密化および耕耘の粗放化によるものである。作土の浅い水田では、土づくり肥料を施用し、15cmを目標に毎年少しづつ深耕する必要がある。
  3. pHは6以上の割合が大幅に低下し、酸性化の傾向にある(図3)。これは、乾田化により、塩基(特に石灰分)が流亡しやすくなったこと(図4)と土づくり肥料(ケイカル)の減少によるものと推察される。このため、麦や大豆等の畑作物を作付する際は、pH6.5(塩基飽和度80%)を目標に、塩基バランスを考慮した資材の施用が必要である。
  4. 有効態燐酸は、前回の調査では、10mg/100g未満が全体の約90%と大部分を占めたが現在ではその割合が20%足らずに減少し、燐酸肥沃度が大幅に改善された(図5)。福井県では、基肥に高燐酸肥料を施用してきたことや、地域により珪酸補給に溶リンが施用されてきたこと等によると推察される(図6)。今後、低コスト化や環境保全の点からも、土づくり肥料の種類や肥料の燐酸成分を見直す必要がある。
  5. 有効態珪酸の肥沃度は従来と同様に低く(図7)、水稲の安定栽培には、有効態珪酸含量15mg/100gを目標に珪酸質資材の積極的な施用が必要である。
成果の活用面・留意点
  1. 一筆ごとの土壌診断結果と処方箋および土壌診断マップは、コンピュ-タを利用した「土壌断面調査結果の活用支援システム」(北陸農業研究成果情報第14号)により提供されている。
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図表2 214464-2.JPG
図表3 214464-3.JPG
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図表6 214464-6.JPG
図表7 214464-7.JPG
カテゴリ 土づくり 肥料 機械化 水田 水稲 施肥 大豆 低コスト 土壌診断 水管理

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