乾燥地土壌の生成機構と特性の解明

タイトル 乾燥地土壌の生成機構と特性の解明
担当機関 国際農林水産業研究センター
研究期間 1992~1993
研究担当者 中井 信
趙貴海
発行年度 1993
要約 トルファン乾燥地土壌は一般に生成初期段階にある。有機物含量は低く,陽イオンが多いことが特徴である。土壌生成には地形が強く関与している。乾燥気候のため土壌中に水は上方に移動し,表面に塩類を集積する。とくに地下水位の高いところでは容易に塩類が集積する。
キーワード 乾燥地土壌,土壌生成,土壌特性,粘土鉱物
背景・ねらい 地球上の乾燥地帯は全陸地の1/3を占める。その自然条件は,乾燥,少雨,強風,夏季の高温と冬季の低温など非常に厳しい。また,人口増加の圧力は過開発,過放牧などによる砂漠化,土壌の塩類化を引き起す危険性を高めている。このような地域における持続的農業開発の基礎的知見を得るため,農業生産の基盤である土壌の生成機構と特性を明らかにする。
成果の内容・特徴 中央アジアの乾燥地域に属する中国新疆地区は,河川が盆地内で消失する閉鎖系の大小の盆 地からなる。その典型であるトルファン地区の土壌調査を行い以下の成果を得た。
地形は,山地から盆地中央部(最低地)に向かって,洪積成扇状地―干涸三角州―沖積平原―湖となっている。それに応じて土壌は,褐色砂漠土―灌漑耕作土―灌漑沖積土―水成土―塩類土―塩泥と変化する。断面発達は弱いものが多く,土壌生成過程は初期段階にあるといえる。 扇端付近から沖積地が主な農業地帯で,人為土壌が広がる。
土壌の反応は多くはpH8~9と高く,水溶性と交換性の塩基含量は50~200me/100gと高く,有機物含量は供給量が低く分解が速いため表層でも1%強と低い。無機植物養分は十分あるといえるが,通常は多すぎて扇端付近や沖積平原には塩類土が生成している。
塩類土は,極端な乾燥のため土壌水分が上方に移動蒸発し,土壌表面に塩分を残したもので,地下水位が4~6mより浅いと塩類化を起こす。可溶性塩の主体は,塩化ナトリウムであるが,一部には微生物活動による硝酸塩地帯もある。
土性は扇頭では石礫からなるが低地ほど細粒質になり,緻密で堅硬な土壌が多い。土壌構造の発達は弱く,粘土の移動集積は断面調査では認められなかった。
一次鉱物は石英と長石を主とするが,重鉱物も含まれている。粘土鉱物はスメクタイトを中心とした可風化性鉱物を多く含んでおり,潜在肥沃度は高いといえる。
以上のように,トルファン地区の土壌は風化生成の初期段階にあって潜在肥沃度が高く,水などの他の条件が整えば良好な農耕地となる可能性がある。ただし,塩類化や風食などの阻害要因も多く,総合的な対策が必要である。
成果の活用面・留意点 乾燥地の土壌は植物養分含量が高いが,これは乾燥地特有の土壌水分が上方に移動するという特性の裏返しであり,土壌の塩類化の危険は常にある。これは不用意な灌漑排水によっても起こる。従って,塩類化の程度と危険性を常に考慮する必要がある。
図表1 214522-1.gif
カテゴリ 肥料 乾燥

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