スリランカの連珠溜池潅漑システムにおける水収支の解明とモデル化

タイトル スリランカの連珠溜池潅漑システムにおける水収支の解明とモデル化
担当機関 国際農林水産業研究センター
研究期間 1991~1994
研究担当者
発行年度 1994
要約 スリランカ・ドライゾーンでは連珠溜池かんがいシステムが発展を遂げてきたが、近年、水利秩序の悪化が指摘されている。当システムの計画的更新の必要性を基本において、簡易な水収支モデルの作成を試みた。
背景・ねらい 南アジアの熱帯稲作地帯では、十分な流域や水源を有しない地域を中心に古くから溜池を利用した灌漑システムが発展してきた。スリランカのドライゾーンにおいても、流域内に幾つもの皿溜池を連珠させることにより、用水の還元機能を最大限に活用できる構造を持った、連珠溜池灌漑システム(図1,2)が長い歴史を有する。しかし溜池の過剰開発の結果、水利用秩序が低下し、連珠溜池灌漑システムの復興は今日、政府の農業政策の重要な柱の一つとなっている。しかし、このシステムの水収支を定量的に解明し、それを効率的な水管理に反映させる試みは、これまでほとんど行われていない。そのため水収支解析(図3)に基づき、連珠溜池灌漑システムの合理的水管理を可能とする水収支モデルの開発を行った。
成果の内容・特徴
  • 水収支解析の結果、溜池における浸透ロスは4.7mm/day と算定された。灌漑期でも溜池消費水量に占める無効利用分(蒸発・浸透ロスなど)の割合は50%を超え、水利用システムとしてみた場合、非効率な面のあることが判明した。
  • 上流溜池ブロックから下流溜池への用水の還元率は2~4割にも及び、連珠溜池潅漑システムが還元水の利用に大きく依存していることが実証された。
  • 水収支解析により、降雨流出率、浸透ロス率、還元水率の値をそれぞれ水収支モデル定数として求め、それらを用いて各溜池の水収支(貯水量変動)シミュレーションを行い、実際の貯水量変動曲線と比較した。その結果、簡易なモデルであるにもかかわらず、水収支モデルの適用性は良好(図4)でありこのモデルは、今後の水管理改善の検討に十分利用可能である。
  • 流域内の溜池の過密化により、水利用や水質面で様々な弊害が出ているため、開発した水収支モデルを適用事例として溜池の統廃合について検討した。その結果、最上流の非効率な小溜池は下流溜池に統合しても、全体としては僅かな利用可能水量の減少で済むことが判明した。今後の連珠溜池灌漑システムの管理上、溜池の統廃合は十分検討すべき余地がある。
成果の活用面・留意点 本研究成果は国際かんがい管理研究所(IIMI)から出版予定、中間レポートはワーキングペーパーとして IIMI から出版済みで、関係機関に配布された。
本研究の成果は農業土木学会誌(94-12号)に発表された。
図表1 214536-1.gif
図表2 214536-2.gif
図表3 214536-3.gif
カテゴリ 水管理

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