トウジンビエ凍結保存花粉利用による小麦半数体の作出

タイトル トウジンビエ凍結保存花粉利用による小麦半数体の作出
担当機関 国際農林水産業研究センター
研究期間 1995~1995
研究担当者 稲垣正典(国際農林水産業研究センター)
A.Mujeeb-kazi(国際トウモロコシ・小麦改良センター)
発行年度 1995
要約 凍結保存したトウジンビエ花粉を小麦に授粉し、新鮮花粉の場合と同等の小麦半数性胚の形成頻度を得た。新鮮花粉が得られない時期及び場所においても、凍結保存花粉を利用することにより小麦半数体が作出できる。
背景・ねらい 小麦の品種改良に要する年限を短縮する育種技術として、トウモロコシ等との遠縁交雑を利用する半数体作出手法が既に確立されている。しかし、交雑には新鮮花粉が必要であり、交雑を実施する時期や場所に制約があって、実際の適用には不都合な点が多い。また、トウモロコシの凍結保存花粉利用の場合には、半数体作出効率が半減する問題点がある。そこで、トウジンビエ花粉を供試し、小麦粉半数体作出頻度を低下させない乾燥凍結処理、保存法を確立しようとした。
成果の内容・特徴
  1. トウジンビエ系統NEC-7006の新鮮花粉は水分含量率40~60%を有し、トウジンビエ雌蕊上では発芽率70~80%を示した。この花粉を温度35℃、相対湿度35~40%の条件下で2時間乾燥すると、水分含量率が5~7%にまで減少し、発芽率は40~50%に低下した。さらに、この乾燥花粉を液体窒素(-196℃)で凍結し、1日後に38℃で5分間処理し解凍しても発芽率は40~50%を維持した(図1)。
  2. トウジンビエの水分含有率の異なる新鮮花粉を乾燥凍結して-20℃、-80℃及び-196℃と異なる温度条件下で1ヶ月及び3ヶ月貯蔵した後、小麦品種農林61号に授粉した結果、花粉採取時の花粉水分含有率に関わらず同様な頻度で胚が形成された(表1)。
  3. 小麦品種農林61号(染色体数42本)にトウジンビエ凍結保存花粉を授粉して得られた未熟胚を人工培養し養成した植物体の染色体数を調査した結果、小麦半数体(染色体数21本)であることを確認した。トウジンビエ凍結保存花粉との交雑における小麦の胚形成(図2)、トウジンビエとの交雑により得られた小麦幼植物の染色体(図3)
  4. 以上の結果、トウジンビエ花粉は乾燥及び凍結に対して耐性が高く、その凍結保存花粉を利用して小麦半数体の作出が可能であることを明らかにした。
成果の活用面・留意点
  1. 小麦半数体の作出において、ドライアイス等で凍結保存したトウジンビエ花粉を使用すれば、任意の時期及び場所において半数体を作出する事ができる。ただし、貯蔵温度-20℃では花粉の保存性がやや劣る。
  2. トウジンビエ系統間で半数体作出効率に差異が見られるので注意を要する。
図表1 214542-1.gif
図表2 214542-2.gif
図表3 214542-3.jpg
図表4 214542-4.jpg
カテゴリ 育種 乾燥 小麦 とうもろこし 品種 品種改良

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