フィリピン低地土壌の分布様式と特性の解明

タイトル フィリピン低地土壌の分布様式と特性の解明
担当機関 国際農林水産業研究センター
研究期間 1991~1995
研究担当者 三浦憲蔵
宮地直道(北農試)
谷山一郎(農環研)
発行年度 1995
要約 フィリピン・ルソン島の主な水田地帯の代表的低地土壌の分布様式とその特性は生成条件(母材、気候、地形)と関連づけて説明できることを明らかにした。この結果、フィリピン低地土壌は概して塩基性母材に由来した特性を有するが、降雨および地形条件が地域間や地域内の低地土壌特性の差異に密接に関与していた。
背景・ねらい フィリピンでは、水稲作に適する土地はすでにほとんど使い尽くされ、水田面積はほぼ極限に達している。一方でフィリピンの人口増加は著しく、需要に見合った米増産が最大の課題となっている。こうした背景から生産基盤である低地土壌の肥沃度的特徴を科学的に把握し、それに基づく高収量技術の開発が強く求められている。そこで、従来明らかではなかったフィリピン低地土壌の分布様式とその諸特性を生成条件(母材、気候、地形)の観点から検討・解明し、各種低地土壌の肥沃度的特徴を明らかにすることをねらいとした。
成果の内容・特徴
  1. フィリピンでは降雨条件の地域間差が大きく、年間の乾燥月(月平均降水量100mm)数に基づく気候区分によると、フィリピン全土を3区分することが可能である(図1)。この区分方法を用いて検討すると、南部ルソン・ビコール地域(乾燥月2)や中部ルソン・南タガログ地域・ラグナ州(同2~4)のような比較的湿潤な地域でグライ土や灰色低地土のような地下水の影響を強く受けた土壌が分布することが明らかとなり、低地土壌分布に対する降雨条件の関与が示された。
  2. 降雨条件が大きく異なる中部ルソンの中央ルソン地域(乾燥月数>4)と南部ルソンのビコール地域(同2>について地形条件と低地土壌分布の関係を調査した結果、前者では自然堤防から後背湿地に向かって灌漑水の影響が強まり、後背湿地で灰色化水田土が分布した。一方、後者では同様の地形変化で褐色低地土から灰色化水田土、灰色低地土、グライ土への遷移が見られ、後背湿地付近で地下水型土壌が分布した。したがって、低地土壌分布には降雨条件のみならず、地形条件も密接に関与していることが判明した(図2)。
  3. 低地土壌は質的に最新の堆積物に由来するため、土壌材料の特性は母材の性質を強く受け継ぐ傾向がある。フィリピン低地土壌は主として塩基性母材に由来することが鉱物分析から示され、そのため、他の熱帯アジア諸国の低地土壌と比較して、有機物および塩基状態、有効態ケイ酸および粘土含量が高い点に特徴があり(表1)、自然肥沃度は概して高い。しかし降雨および地形条件は低地の土壌水分状況を強く支配し、地域間や地域内の自然肥沃度に関わる土壌特性にしばしば差異を発現することが明らかとなった(表2,図3)。
成果の活用面・留意点
  1. フィリピン各地の低地土壌の特性は母材、降雨、地形条件から推定できることに根拠が得られ、肥沃度評価の基礎として活用し得る。
  2. 乾期作の場合の最重要害虫であるマメノメイガ(Maruca testulalis)の被害が回避できることから、安定した収量が得られる。
  3. 報告書(K. Miura et al. 1995, Pedological Characterization of Lowland Areas in the Philippines)を作成し、フィリピン国内の関係研究機関に配布した。
図表1 214544-1.gif
図表2 214544-2.gif
図表3 214544-3.gif
図表4 214544-4.gif
図表5 214544-5.gif
カテゴリ 害虫 乾燥 水田 水稲

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