南米サバンナにおける陸稲の酸性土壌耐性メカニズムの解明

タイトル 南米サバンナにおける陸稲の酸性土壌耐性メカニズムの解明
担当機関 国際農林水産業研究センター
研究期間 1995~1995
研究担当者 岡田謙介
Albert Fischer
Elcio Guimaraes (CIAT)
発行年度 1995
要約 南米のサバンナの酸性土壌において、陸稲の酸性土壌耐性に関する品種間差の生理的機構について検討した。作付期間中に土壌pHが4.3程度に下がると土壌溶液中のアルミ濃度が上昇して根に対する直接害を引き起こすが、耐性品種は感受性品種よりわずかに高い根圏pHを維持してアルミ害を回避することがわかった。
背景・ねらい 南米にはセラード、ジャノス等240万km2に上がる広大なサバンナがあるが、低肥沃度と土壌酸性のために、粗放な放牧地として用いられてきたのみであった。しかし近年になって陸稲/草地体系が開発され、持続的な作付け体系として広く採用されつつある。
この作付体系には酸性土壌耐性をもつ陸稲が必要であるが、この耐性の生理的機構についての理解はあまり進んでいない、そこで耐性および感受性の品種を用いてその機構を明らかにし、効率のよいスクリーニング法開発の基礎知見とすることを目的とした。
成果の内容・特徴
  1. 土壌酸性矯正用の炭カル(炭酸カルシウム)使用試験を圃場で行った。300kg/ha以の低施用領域において、耐性品種は感受性品種よりも高い収量を示し、両品種群の耐性の差が確認された(図1)。
  2. 陸稲の慣行栽培では、生育の中~後期にのみpHが4.3程度にまで低下し、土壌溶液のアルミ濃度が直接の害作用を及ぼしうる高さに達していた(図2)。このことは、土壌アルミの直接害が存在するとしてもその可能性は生育の中~後期に限られることを示している。土壌酸性化の進行は、慣行施肥法としてカリと窒素(尿素)を分施することによって、土壌塩類濃度の上昇と緩慢な硝酸化成を引き起こしたためであった。
  3. 作物のアルミ酸性機構は、アルミを体内に吸収しても正常な生体機能を維持する体内耐性機構とアルミの組織内進入を何らかの機構で阻止する体外排斥機構と大別できる。ポット試験において、耐性品種は感受性品種よりも高い土壌pHを維持し、そのため根圏土壌溶液アルミ濃度を低く押さえていた(図3)。いっぽう根圏土壌溶液中のアルミ濃度および作物体アルミ濃度が同じ場合には、作物体の成長は耐性品種と感受性品種とで差がなかった(図4)。これらの結果は、体外排斥機構の一つとして高い根圏pHの維持が、陸稲の酸性土壌耐性の機構として重要であることを示唆している。
成果の活用面・留意点 本成果をもとに、育種専門家と共同で室内大量選抜法を開発中である。また本知見は、陸稲と同様に比較的酸性土壌耐性の強い他の作物の耐性メカニズム解明の参考となる。
図表1 214545-1.gif
図表2 214545-2.gif
図表3 214545-3.gif
図表4 214545-4.gif
カテゴリ 育種 施肥 品種 陸稲

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