マレイシアの直播水稲栽培における雑草イネ(padi angin)の生態と防除

タイトル マレイシアの直播水稲栽培における雑草イネ(padi angin)の生態と防除
担当機関 国際農林水産業研究センター
研究期間 1995~1995
研究担当者 渡辺寛明(国際農林水産業研究センター)
Azmi Man(マレイシア農業開発研究所)
Md. Zuki Ismail(ムダ農業開発公団)
Duncan A. Vaughan(農業生物資源研究所)
発行年度 1995
要約 1989年以降マレイシアの直播水稲栽培で問題になっている雑草イネの発生実態と雑草害を整理し、その形態変異と生態的特性から、耕種的な防除方法を明らかにした。
背景・ねらい マレイシアの水田では1980年代における水稲の移植栽培から直播き栽培への移行に伴い雑草問題が深刻化しているが、タンジュンカランとムダの両水田地区では1989年以降“padi angin”と呼ばれる易脱粒性イネが発生し、多発すれば水稲の減収をもたらす雑草として現在大きな問題となっている。この雑草イネはこれまで栽培されてきた水稲品種に由来するものと考えられ、水田で発生すると防除がきわめて困難である。そこで、雑草イネの防除法の策定に資するために、マレイシアにおける雑草イネの発生実態を解明するとともに、その形態変異と生態的特性を明らかにした。
成果の内容・特徴
  1. ムダ地区では、1980年代後半から1990年にかけて、前作以前のこぼれ種から発生する自生イネ(volunteer rice)を栽培する自生栽培と自生イネが混生し易い乾田直播き栽培が広く行われたが、両栽培法の広域実施が1990年代のムダ地区水田における雑草イネの発現と多発をもたらした主要因と考えられた(図1)。
  2. 雑草イネ多発水田(15個体/m2、全稲個体の35%)で水稲の籾収量は3.2ton/ha(通常の水稲収量に対して40~50%の減収)であった。
  3. ムダ地区内の水田で採取した雑草イネには幅広い形態的変異がみられたが、現在マレイシアで栽培されている水稲品種に比べると、概して長稈一穂籾数が多く、短粒で千粒重は小さい傾向が認められた(表1)。形態的には水稲品種に酷似する雑草イネもみられた。出穂期は水稲品種に比べて概して遅かった。
  4. 雑草イネの発生は移植栽培では認められず、直播栽培でのみ認められた。特に、乾田直播栽培で雑草イネが多発する場合が多かったが、潤土直播栽培では少なかった(図2)。
  5. 採種直後の雑草イネ種子の発芽率は概して栽培品種よりも低く、現在マレイシアで栽培されている水稲品種よりも強い種子休眠性を有していた(図3)。この種子休眠性と前述の易脱粒性が雑草イネの重要な生態的特性と考えられた。
  6. 以上の結果から、雑草イネ対策として、水稲作付前の耕耘や除草剤散布による水稲の自生防除水稲品種の均一な種籾の更新、草丈や葉色等による早期の雑草イネの同定と手取り除草が有効であると考えられる。しかし、雑草イネが多発する水田では、乾田直播栽培から潤土直播栽培や移植栽培への一時的な栽培法の転換も必要である。
成果の活用面・留意点 以上の成果は、雑草イネの防除法としては当面耕種的方法が有効であることを示しており、ムダ農業開発公団を通して現場の水稲栽培指導に利用されるものである。
図表1 214548-1.gif
図表2 214548-2.gif
図表3 214548-3.gif
図表4 214548-4.gif
カテゴリ 病害虫 乾田直播 雑草 雑草イネ 直播栽培 除草 除草剤 水田 水稲 品種 防除

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