フタバガキ樹木の環境適応性の解明

タイトル フタバガキ樹木の環境適応性の解明
担当機関 国際農林水産業研究センター
研究期間 1995~1995
研究担当者 丸山 温
Yap
S.K.
発行年度 1995
要約 東南アジア降雨林の優占樹種、フタバガキ幼樹の直達光下での枯損原因は、樹体内の通水機能が低く、蒸散量調節のため日中気孔閉鎖し、光合成能が極端に低下することによることを解明した。
背景・ねらい 東南アジア降雨林地帯では荒廃・劣化林地の再造林が近年急速に進んでいる。アカシア、ユーカリ等の外来早生樹が中心で、有用材を供給する地元産樹種は低い環境適応能力と遅い初期成長のため造林が進んでいない。特に数100種存在する優占樹種、フタバガキは幼樹段階で直達光下での枯損割合が極めて高く、造林は困難である。造林を可能にするためには低い環境的応性を引き起こす生理的要因の解明が必須で、この研究では照度・乾燥(蒸散)・光合成という3要因に着目し、因果関係を解析した。
成果の内容・特徴 マレイシア森林研究所(FRIM)と共同で天然林、列状造林地及び苗畑で研究を進めた。様々な立地に植えられたフタバガキ若木と天然林内成木の光合成、蒸散、気孔反応、水ポテンシャル等の日変化を測定し、環境条件と生理過程との関係を解析した。対比植物として適応能力の高いアカシアを選び、問題点を浮き彫りにした。
  1. フタバガキではしおれを起こす水ポテンシャルがきわめて高く(図1)、耐乾性は低い。しかし、なかでも苗畑育成幼樹より天然生幼樹、または乾性立地種で相対的に高い乾燥耐性を示した。
  2. 光合成の温度適応域は高標高立地種と乾燥立地種で広いことが判明した。
  3. 直達光下では急速な気孔閉鎖が起こり、そのため日中の光合成が低下したが、この傾向は高い木でより顕著であった。フタバガキではアカシアに比し水分通導性が低く、かつ高木では根からの距離が大きいためさらに低くなり、蒸散に対する水の供給が遅れがちであった(図2)。このことがフタバガキ の低い環境的応性の主要因の一つと判定した。
  4. 一方対照種アカシアでは土壌から葉までの水分通導性が高く、蒸散で消費された水分を速やかに供給でき、日中の気孔コンダクタンスを高く維持でき(図2)、光合成の低下も起こらなかった。
  5. 以上の結果、天然林の更新には値域の水分環境を維持できる択伐-天然更新法の適用が適切で、補正造林にも尾根や高地立地種の導入が適切と判定した。
成果の活用面・留意点 従来、フタバガキの初期の成長抑制・枯損は強い光条件が原因とされていた定説を覆し、低い乾燥耐性が原因で、しかも樹種間に水分生理反応に違いがあることが解明された。この成果は今後のフタバガキの造林技術の開発に活用できる。
図表1 214556-1.gif
図表2 214556-2.gif
カテゴリ 乾燥 光条件

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