ベトナム、カントー省における農業開発に伴う窒素フローの変動予測〔行政〕

タイトル ベトナム、カントー省における農業開発に伴う窒素フローの変動予測〔行政〕
担当機関 (独)国際農林水産業研究センター
研究期間 1999~2003
研究担当者 Ngo Ngoc Hung(ベトナム
カントー大学)
渡辺武
南雲俊之(北海道大学)
発行年度 2002
背景・ねらい メコンデルタにおいては、稲作作付け回数の増加、家畜、魚およびエビの生産の増加等によるファーミングシステムの変化にともない地域における養分サイクルが大きく変動している。しかしながら、物質循環の面から見た農業生産活動の持続性については評価がなされていない。メコンデルタのカントー省においては、2010年に向けた農業開発計画が公表されている(表)。そこで同省を対象に、計画が達成された場合の2010年における窒素フローを推定し、1999年のそれと比較を行い、地域の窒素循環がどのように変動するのかを評価する。

成果の内容・特徴
  1. 2010年には畜産と水産養殖が拡大する一方で、省内で生産される飼料の供給が増加する需要を満たすことができないために、飼料の多くを省外からの移入に依存しなければならない。家畜の飼養頭数が大幅に増えることから、農地あたりの糞尿発生量は19kgN/ha/year
    (1999年)から59kgN/ha/year (2010年)と3倍強に増える(図)。
  2. 何の対策も講じられない場合、多くの家畜糞尿は未処理のまま河川・水路に投棄される可能性が高い。窒素自体の負荷量は日本で畜産の盛んな南九州等と比較してかなり少ないものの、すでにカントー省では大腸菌やサルモネラ等の微生物による公共水域の汚染が顕在化しており、家畜糞尿対策を早急に取ることが必要である。加えて、養殖に伴う廃水にも注意していくことが必要である。
  3. 農地における窒素収支は、1999年で39kgN/ha/yearと推定された。収支がマイナスになるアフリカ諸国や東北タイ、大幅に過剰になる中国や南九州と比べて、カントー省の農地における窒素収支は比較的良い状況にある。家畜糞尿を農地に還元し水質汚染を防止しながら化成肥料の投入量を低減することが望ましい。

成果の活用面・留意点
  1. 本手法で得られる結果は、農業開発計画が達成された場合のカントー省における窒素循環の変化を予測し、農業生産活動による環境劣化を未然に防止するための行政的対応の策定に活用できる。
  2. 家畜糞尿および養殖廃水が河川・水路といった公共水域に廃棄されないようにすることが重要である。家畜糞尿については、堆肥化による農地還元とバイオダイジェスター(家畜糞尿などから嫌気発酵によりバイオガスを生産する装置)を活用して、その発酵液の農地還元を普及していく必要がある。

カテゴリ 肥料

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