熱帯対応型サイレージ乳酸菌を評価するための実験モデル〔研究〕

タイトル 熱帯対応型サイレージ乳酸菌を評価するための実験モデル〔研究〕
担当機関 (独)国際農林水産業研究センター
研究期間 2000~2003
研究担当者 Sunee Nitisinprasert(カセサート大学
Supanit Hiranpradit(タイ農業局)
タイ)
大桃定洋
発行年度 2002
要約 長さ約2cmに切断し、乾燥した後に高圧蒸気滅菌した熱帯牧草ネピアグラス(水分および糖含量を調整)の一定量をプラスチック袋に入れ、酵母およびコリ型細菌と評価すべき乳酸菌とを接種してから密封して培養する簡易なサイレージ醗酵実験モデル(改良パウチ法)は、タイでのサイレージ調製用乳酸菌を評価するための手法として有効である。国際農林水産業研究センター・畜産草地部
背景・ねらい タイでは近年、都市部を中心に生乳および醗酵乳の消費が急増し、生鮮乳生産は需要量の約60%でしかない。これは、乳用牛の低い泌乳能力もさることながら、タイの酪農歴史の浅さに基づく未熟な飼養管理技術とその酪農家への技術普及の遅速さが原因のようである。一般的には粗飼料として生草類や稲わらを給餌して約3,100Kgを搾乳しているが、実験農場や先鋭的酪農家集団は良質サイレージの通年給餌によって4,200~4,500Kgを記録している。しかし、サイレージ調製は必ずしも容易ではなく、期待は大きいものの普及していない。その原因の一つは乳酸菌の能力に基づく調製過程の不十分な乳酸醗酵にある。
そこで、タイでのサイレージ調製に適した優良乳酸菌を検索するため、先に筆者らが考案した乳酸菌評価用のパウチ法を熱帯対応型に改良したサイレージ醗酵実験モデルを構築する。

成果の内容・特徴
  1. タイで調製された代表的サイレージの微生物叢をしらべた。牧草サイレージ(バンカーサイロ)は相対的に細菌類および酵母が多く、酪酸菌と乳酸菌は少なかったが、コーンサイレージ(バックサイロ)では乳酸菌と一般細菌が多く、腸内細菌、酵母、カビが少なかった(表1)。
  2. 酵母および細菌類の増殖を抑制する乳酸菌をサイレージ醗酵適性株と規定し、適性株を検索するためのサイレージ醗酵実験改良モデルを構築した。本モデルはネピアグラス培地(水分含量75%、糖含量1.5%に調整)にサイレージから分離した酵母、コリ型細菌を評価すべき乳酸菌とともに接種し、吸引・密封して培養することを特徴とする。
  3. 培養温度は熱帯地域の野外での調製・貯蔵を考慮して45℃とする。
  4. 改良モデルは接種菌数が重要である。 例えば、分離した乳酸桿菌LG2-1株を他の103倍量接種すると乳酸菌の増殖が優占してコリ型細菌の増殖を抑制するが、同じ分離株でも乳酸球菌N-22株の接種では培養初期に菌数が急増するものの、その後は急減して他の微生物の増殖を抑制することもない(表2)。
  5. LG2-1株とN-22株とを105 cfu/g 混合接種すると醗酵初期から乳酸菌数を高位に保つことができ、その後のpH低下と相まって良質サイレージの調製が期待できる。
  6. 本法は多数の菌株を簡便・迅速に検索することがでる。

成果の活用面・留意点
  1. 本評価法は、熱帯地域での良質サイレージ調製に不可欠な熱帯対応型乳酸菌を簡便・迅速に検索する手法として有効であり、追試も容易である。
  2. 十分な嫌気条件や糖類の供給などの基本的なサイレージ調製技術が確保されない時には、添加する乳酸菌が優秀であっても良質サイレージの調製には至らないことに注意しなければならない。

カテゴリ 乾燥 飼育技術 乳牛 評価法

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