香り米における香り成分の生成と水ストレスによる変動〔研究〕

タイトル 香り米における香り成分の生成と水ストレスによる変動〔研究〕
担当機関 (独)国際農林水産業研究センター
研究期間 2001~2002
研究担当者 Nguyen Thi Thu Huong(筑波フェロー
ベトナム)
稲富秀夫(明治大学)
椛木信幸(農研機構
吉橋 忠
中央農研セ)
発行年度 2002
要約 タイの香り米(Khao Dawk Mali 105)に含まれる香り成分である2-アセチル-1-ピロリンは、水分ストレス応答物質であるアミノ酸プロリンから生成している。圃場試験において、開花後の水ストレスにより香り成分を増加させることが可能である。
背景・ねらい 一部途上国では我が国と異なり、ポップコーン様の香りのある香り米が好まれる。香り米の品質はその香りで特徴づけられる。香り米の特徴的な香りの成分は、2-アセチル-1―ピロリンである。
また、タイにおける香り米の生産地域においては、特定の地域で生産した香り米の香りが強く、高品質であり、他地域で生産される香り米の香りは弱い。このことにより、需要が多く見込まれる香り米の他地域での増産が限られており、品質差の原因の解明が望まれている。
そこで、2-アセチル-1-ピロリンの生成機構を解明するため、安定同位体標識アミノ酸を香り米に添加し、標識2-アセチル-1-ピロリンの生成の有無を検討する。また、得られる生成機構から、圃場試験における香り成分の栽培条件による増加の可能性を検討する。

成果の内容・特徴
  1. 各種アミノ酸を香り米品種Khao Dawk Mali 105の植物体に添加すると、プロリンを添加した場合には2-アセチル-1-ピロリンの濃度が顕著に増加する(図1)。このことから、アミノ酸が2-アセチル-1-ピロリンの生成に関与していると考えられる。
  2. 窒素15標識プロリンを添加すると、同位体標識2-アセチル-1-ピロリンが生成するが、窒素15標識グリシンを添加した場合には生成しないことから、2-アセチル-1-ピロリンの前駆体はプロリンである。しかし、プロリンのカルボニル基を炭素13とする標識プロリンを添加すると、同位体標識2-アセチル-1-ピロリンが生成しない。このことから、2-アセチル-1-ピロリンの1-ピロリン環はプロリン由来であり、アセチル基はプロリン由来ではないことがわかる(図2)。
  3. タイ・コンケン県の試験圃場において、開花後に水分ストレス処理を行うと玄米中の2-アセチル-1-ピロリン含量が増加する(図3)。このことから、開花後の特定の時期に水分ストレスがかかることによって、Khao
    Dawk Mali 105の品質が向上することが示唆される。タイ東北部における高品質香り米生産地域では、開花後には水ストレスがかかった状態になるため、高品質香り米が生産される理由を生成機構から説明することが可能である。

成果の活用面・留意点 香り米の2-アセチル-1-ピロリンの生成機構を利用して香り米の品質を向上させる場合、開花後に水分ストレスをかける必要があるが、開花後は、稲がストレスに弱い時期であり、収量の低下等が生じる可能性がある。

カテゴリ 香り成分 栽培条件 品種

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