タイトル |
フィリピンにおける養殖ハタ大量死はウイルス性神経壊死症に因る〔研究〕 |
担当機関 |
(独)国際農林水産業研究センター |
研究期間 |
2000~2005 |
研究担当者 |
Erlinda R. Cruz-Lacierda(東南アジア漁業開発センター
Leobert de la Pena
フィリピン)
前野幸男
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発行年度 |
2002 |
要約 |
原因不明であった養殖ハタの大量死は、フィリピンで初めてのウイルス性神経壊死症(VNN)の感染発病に因るものであり、本症の確定診断は病原病理学的に可能である。国際農林水産業研究センター・水産部
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背景・ねらい |
近年アジアにおいて魚介類の養殖生産量は飛躍的に増大し、総水産物生産のなかで大きな割合を占めている。しかしながら集約的養殖方法により疾病が急増し、親魚育成期および種苗生産期における重大な生産阻害要因となっている。フィリピンの種苗生産場で飼育されていたチャイロマルハタ仔魚に原因不明の大量死がみられたため、チャイロマルハタ仔魚を病原病理学的に調査してその病因を明らかにし、診断技術を確立する。
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成果の内容・特徴 |
- チャイロマルハタ(図1)の瀕死魚は摂餌不良および異常遊泳を特徴とする外観症状を呈し、瀕死魚の脳および網膜組織の神経細胞に細胞壊死を伴う明瞭な空胞変性が認められる(図2)。
- 電子顕微鏡観察により、病理変化の観察された脳および網膜組織の神経細胞について、その細胞質に直径20-25nmの多数のウイルス粒子が検出される(図3)。
- 病魚頭部の磨砕濾液を接種した魚類由来株化細胞であるSSN-1細胞に、顆粒様の物質を含む球形細胞および細胞の膨化を特徴とする細胞変性効果が発現した。その細胞の細胞質に小型(直径20-25nm)球形のエンベロープを有さない多数のウイルス粒子が電顕観察により確認される。
- RT-PCR法より病魚および感染培養細胞から魚類ノダウイルスの外被タンパク質遺伝子が検出される。
- 大量死したチャイロマルハタ病魚を病原病理学的に調査したところ、その原因はウイルス性神経壊死症(VNN)である。本症例はフィリピンにおけるVNNの初記載である。
- 健常なチャイロマルハタを用いて感染実験を行った結果、VNN自然発病魚と同様の症状が再現された(図4)ことから大量死したチャイロマルハタの死因はVNNの原因ウイルスの感染発病によるものである。
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成果の活用面・留意点 |
- 原因不明であったチャイロマルハタの大量死がウイルス性神経壊死症に因るものであることが明らかになったことから、本症の確定診断が可能となる。
- 本診断法を用いて同地域の高価値養殖魚種の稚仔魚期に深刻な被害を及ぼす本症の発生実態を明らかにすることが重要である。
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カテゴリ |
診断技術
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