タイトル |
熱帯地域における非作付け期の土壌乾燥に起因する生育抑制 |
担当機関 |
(独)国際農林水産業研究センター |
研究期間 |
2000~2004 |
研究担当者 |
野副卓人
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発行年度 |
2003 |
要約 |
が酸化され、それに伴って可給態リン量が減少することが一因となっている。
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背景・ねらい |
熱帯地域においては、水稲二期作のような集約的農業が一般的に行われている。しかし、この農法では非作付け期が短く、土壌に対する負荷も大きくなるため、非集約的な農業に比べて一作あたりの収量が減少する場合が多い。本研究では、水稲二期作体系において持続的な水稲栽培を行うため、非作付け期の水管理に起因する水稲生育抑制とそのメカニズムを明らかにする。
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成果の内容・特徴 |
- 1972 年の試験開始以来、それぞれのプロットで同じ水・有機物管理が繰り返されている試験において、2001 年乾期から2002
年雨期までの4 作について、非作付け期の土壌乾燥・灌水(W0・W1)×稲わら無施用・施用(S0・S1)の4区を4反復で設定する。各試験区から土壌及び植物体サンプルを採取し、土壌二価鉄量、植物乾物重、養分濃度などを測定する。
- 2001 年乾期から2002 年雨期のいずれの作期においても、W0S0 区において、他区より収量が低くなる(図1 )。2002
年乾期作について、W0S0 区において他区に比べて、特に稲作初期で生育が抑制される(図2 )。すなわち、非作付け期の土壌乾燥によって水稲の初期生育は抑制され、収量を減少させるが、稲わら施用(W0S1)、非作付け期の土壌潅水(W1S0)によってこの抑制は緩和される。他の作期についても同様の傾向となる(データ非表示)。
- W0S0 区における葉の養分濃度は、窒素濃度は各処理間の差はほとんどみられず(図3 )、カリウム、亜鉛(データ非表示)についてもこれらの要素による生育抑制は認められない。リン濃度は特に初期において他の区よりも著しく低く、その値はリン欠乏が生じ始めるといわれる1(g
kg-1 plant)程度である(図4 )。また、この区では茎数が少なく、深緑色を呈しているため、この生育抑制は、リン欠乏によるものと考えられる。他の作期についても同様の傾向となる(データ非表示)。
- 非作付け期の土壌排水で二価鉄が減少するため、W0S0 区における、作付け期にの二価鉄量は他の区よりも小さくなる(図5 )。これは他の作期についても同様の傾向となる(データ非表示)。2002
年乾期作前の土壌中の可給態リン(Olsen リン)濃度は、W1S1(2.5)>W1S0(2.3)>W0S1(1.9)>W0S0(1.4)となりW0S0 区で最小となる。土壌のリン酸は、二価鉄の酸化と同時に吸着され、可給度が減少すると言われているが、土壌中の二価鉄濃度はこの逆の順となる(図5 )。以上から、W0S0 区においてリンの可給度が減少するのは非作付け期の二価鉄の減少が一因となっていると推察される。この他、 非作付け期の土壌乾燥は、表層への塩基類の集積を促進し、これに伴ってリンの可給度や吸収に影響を及ぼすことも考えられる。
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成果の活用面・留意点 |
- 非作付け期に土壌乾燥を防ぎ、稲わらを施用する土壌管理は、水稲の生育抑制を軽減する効果がある一方で、温室効果ガスを増加させる懸念もある。この生育抑制の方策は、環境への影響を勘案し、総合的に行う必要がある。
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図表1 |
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図表2 |
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図表3 |
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カテゴリ |
乾燥
水稲
水管理
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