タイトル |
イネ科作物のタンパク態窒素利用特性 |
担当機関 |
(独)国際農林水産業研究センター |
研究期間 |
2001~2003 |
研究担当者 |
岡田謙介
岡本美輪(東京大学大学院農学生命科学研究科)
|
発行年度 |
2003 |
要約 |
のみを利用するトウモロコシ、パールミレットのタイプとに分かれる。
|
背景・ねらい |
農家の化学肥料利用量が少ないサブサハラなどの途上地域では、家畜糞、作物残渣、などの有機物を併用して窒素を施用している場合が多い。窒素を有機態で施用した場合、一時的に土壌中の可給態窒素の主体であるタンパク態の画分が増大することが知られている。作物によるこの画分の利用特性を知ることは、有機・無機併用型の土壌管理における合理的な施用指針を得るために重要である。そこで、世界的に食料として重要な4 つのイネ科作物について、タンパク態窒素利用特性を明らかにする。
|
成果の内容・特徴 |
- 同じ量の窒素(150 kg N ha-1)を無機態(尿素)と有機態(米糠と稲わらの混合物、C/N
比20)で圃場に施用してイネ科4作物の反応を比較したところ、生育初期の反応から2つのグループに分かれた。ソルガムとイネ(陸稲)は、有機態窒素区で無機態窒素区よりも生育がよく(表)、窒素吸収量も高い。一方トウモロコシとパールミレットでは処理間に有意な生育の差は認められない(表)。開花後は、いずれの作物でも処理間差がみられない。有機態窒素に対するイネの反応は既報のとおりであるが、ソルガムの反応は新規の知見である。
- ポットに畑土壌を詰め、硝安区、米糠区(C/N 比12)、米糠・稲わら区(C/N 比20)を設けて、同量の窒素(500 mgN
kg-1)を施用し、移植後21 日間の窒素吸収量を比べたところ、圃場試験と同様に2つのグループに分かれた。すなわちソルガムとイネは、米糠区および米糠・稲わら区での窒素吸収量が、硝安区のそれに比べて劣らない(図1 )。それに対しトウモロコシとパールミレットの窒素吸収量は硝安区で高い。前2作物の結果は土壌中のタンパク態窒素量と、後2作物の結果は無機態窒素量と、それぞれよく対応している(図2 )。
- 同じポット試験において、根系形質である根の長さ、表面積、フラクタル次元などには処理間差がほとんどないので、生育の違いは根系構造ではなく、それぞれの形態の窒素に関する単位根長あたりの吸収速度の違いによってもたらされるものである。
- タンパク態窒素の直接吸収速度を、水耕状態で比較した。タンパク様物質は、畑土壌から中性リン酸緩衝液で抽出し、さらに透析して得たものを用いた。その結果によれば、ソルガムとイネはトウモロコシよりもタンパク態窒素吸収速度が高く、パールミレットはほとんど吸収しない(図3
)。このことは、圃場やポット土耕試験での結果が、タンパク態窒素の直接吸収速度の差によってある程度説明されることを示している。また、トウモロコシは水溶液中で遊離しているタンパク態窒素はある程度吸収できるが、土壌中で鉱物に吸着しているタンパク態窒素を脱着する機構を持たない可能性がある。
|
成果の活用面・留意点 |
- ソルガムと陸稲においては、土壌中のタンパク態窒素量の増大・維持にも目を向けた施肥法が重要である。
- 砂質土壌のように、無機態窒素が溶脱し、有機態のみが土壌に維持されやすい条件での効率的な窒素肥沃度管理方法の指針の基礎知見となる。
|
図表1 |
 |
図表2 |
 |
図表3 |
 |
カテゴリ |
肥料
施肥
ソルガム
とうもろこし
陸稲
|