イネのアルミニウム耐性のメカニズムと耐性品種の迅速スクリーニング手法

タイトル イネのアルミニウム耐性のメカニズムと耐性品種の迅速スクリーニング手法
担当機関 (独)国際農林水産業研究センター
研究期間 2001~2003
研究担当者 岡田謙介
渡部敏裕
発行年度 2003
要約 と相対保持量が大きな役割を果たしている。このメカニズムに基づいて、より迅速に耐性品種を選抜することができる。
背景・ねらい 陸稲(畑イネ)は途上国の小農にとって重要な畑作物であるが、湿潤熱帯に多く分布する赤黄色土壌では土壌酸性が主要な生育制限要因となっていることが多い。経済的な理由から炭カルの大量施用による土壌pH
矯正は難しいことが多く、耐性をもつ品種の開発が望まれている。しかしながら、陸稲の酸性土壌耐性は、多くの研究がなされているコムギなどに比べて不明な点が多い。これまで南米のサバンナで行われたJIRCAS
の研究において、酸性オキシソル土壌における陸稲の酸性土壌耐性の品種間差に、カルシウム(Ca)が大きく関与していることが示されている。そこでこの点に着目して、これまで多く研究されてきたコムギとの対比で、陸稲の酸性土壌耐性の機構を明らかにし、効率のよいスクリーニング方法を提案した。
成果の内容・特徴
  1. 酸性土壌害の主因はアルミニウム(Al)であるとされており、その最初期の症状は根の伸長阻害である。水耕液にAl を添加した区の根相対伸長量(%)をもとにイネのAl
    耐性を判定した。Al 耐性はトヨハタモチ(73%)> Oryzica Sabana6(53%)> IR72(28%)> IR36(19%)≧
    Kasalath(16%)の順である(図1 )。Ca濃度を高めることによっていずれの品種でも生育は回復するが、その程度は感受性品種ほど大きい(図1
    )。
  2. イネの場合、Al 添加によって伸長が低下しているところにCa同族元素であるバリウム(Ba)を加えると、いずれの根の伸長もさらに低下する(図1
    )。しかしコムギ(Atlas 66)の場合は、Ba添加によって根の伸長阻害は完全に回復する(図2 )。このようにAl 過剰害を受けている根に対するBa
    の効果がイネとコムギとでは正反対であり、Al 耐性の機構が異なっていることが推察される。
  3. 従来コムギではAl 耐性のスクリーニング手法として、根の内部に浸透したAl量をヘマトキシリンで染色して定量する方法が広く使われ、その実効性も確認されてきた。しかしこの方法はイネには適用できないことがわかっている。これは上述のように両作物におけるAl
    耐性の機構が異なるためであると推察される。そこで、イネでは根細胞壁のAl とCa吸着能の差が酸性土壌耐性メカニズムに関与している可能性があることをふまえ、ピロカテコールバイオレット(PCV)を用いた短時間スクリーニング法を開発した。すなわち、15
    分のAl 処理で根細胞壁にAl を吸着させた後、高Ca 濃度の溶液に移して易交換性Al をCa で置換し、残った難交換性Al
    をPCV で染色した。その結果、本スクリーニング法では、感受性の3 品種の根端は抵抗性の3 品種のものより濃く染色され(図3
    )、根伸長をもとに評価したAl 耐性の結果と一致した。一方、高Ca 濃度溶液による易交換性Al置換除去を省略し、脱塩水でのみ洗浄した場合は、染色の品種間差は明確でなかった。この方法により極短時間のスクリーニングが可能である。
成果の活用面・留意点
  1. 本スクリーニング方法を、酸性圃場における生育と比較させる必要がある。
図表1 214598-1.gif
図表2 214598-2.gif
カテゴリ しそ 抵抗性 品種 陸稲

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