タイトル |
ラドン・水収支法によるため池への地下水浸入と貯水の地下浸出の定量解析 |
担当機関 |
(独)国際農林水産業研究センター |
研究期間 |
2002~2004 |
研究担当者 |
濱田浩正
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発行年度 |
2003 |
要約 |
への地下水浸入と貯水の地下浸出を定量することができる。
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背景・ねらい |
ため池への地下水浸入と貯水の地下浸出を定量することは、水資源の有効利用、水質の予測などに役立つ。地表水の収支のみを考慮する従来の方法では、地下水浸入と貯水の地下浸出を同時に定量することはできなかった。そこで、水に含まれるラドンに着目し、ラドン収支と水収支を用いた解析法を提示した。
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成果の内容・特徴 |
- ラドンは地中のラジウムから供給される放射性のガスで、水に溶解する。ため池の水位とラドン濃度に変化がない場合、ため池の水収支とラドン収支は図1
で示される。未知数は、地下水の浸入と貯水の地下浸出の2 つなので、水収支式とラドン収支式を解くことによって、これらは求められる。
- 大気中へのラドンの飛散については、水と空気の境界にStagnant film を仮定し、film より下が貯水のラドン濃度、上を空気のラドン濃度とすると、大気中への飛散率=貯水池の面積×ラドンの拡散係数×貯水の濃度/
Stagnant film厚さとなる(図1 )。恒温室での静水のラドン濃度の時間変化から、Stagnant film厚さは、830μm と求められた。
- この解析法を現地に適用した(表1 )。現地は長野県のF 池である。F 池は地すべり地帯に位置し、貯水の地下浸出が地すべりを誘発することが懸念されている。面積は1550m2、平均水深は2.8m
である。ため池の水位変化は認められず、流入は近傍で湧出した湧水と地表を流下している流下水の2 カ所で認められた。水収支は、0.11+0.15+x=0.43+0.09+y、ラドン収支は0.72+6.54x=3.74+1.00+0.18+0.41y となった。これらの式を解くことによって、地下水の浸入x は0.67(L/s)、貯水の地下浸出y は0.41(L/s) と推定することができた。
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成果の活用面・留意点 |
- この解析法は地下水流入と流出が生じる通過池に適用でき、得られた地下水浸入量と貯水の地下浸出量は、水資源の有効利用、水質の予測、地すべり防止などに役立つ。
- 水位変化のある場合には、水収支式とラドン収支式に水位変化による項を加える。
- この解析法は、貯水は十分に混合されラドン濃度が一定であることを前提にしている。ため池の貯水の混合については、現段階では調査事例が少なく、今後、どのような場合、十分に混合されているかを明らかにする必要がある。
- ラドン濃度の測定には液体シンチレーションカウンタが必要である。
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図表1 |
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