タイトル |
グルテニン蛋白質遺伝子からみた日本小麦の特異性 |
担当機関 |
(独)国際農林水産業研究センター |
研究期間 |
2002~2003 |
研究担当者 |
中村 洋
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発行年度 |
2003 |
要約 |
小麦のグルテニン-D1f 遺伝子によるものと考えられる。
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背景・ねらい |
製パンや製麺などの重要な品質・加工特性に関連する、コムギの種子貯蔵タンパク質の分析とその遺伝変異の解析により、日本のコムギ品種の遺伝的・品質的特徴を明らかにし、今後のコムギ育種の参考となる研究情報を得る目的で、コムギ種子貯蔵タンパク質・グルテニン遺伝子の遺伝変異を明らかにする。
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成果の内容・特徴 |
- グルテニン蛋白質遺伝子Glu-D1f は、パン文化圏である欧米品種のみならず、めん文化圏であるアジア品種も含む世界の小麦品種にはほとんどみられない、きわめて稀なグルテニン蛋白質遺伝子である(表1
)
- この稀なグルテニン蛋白質遺伝子Glu-D1f は、小麦粉の生地物性を弱くするので、パン物性には不適でうどんに適すると言われている蛋白質遺伝子である。中国品種ではわずか1.8%の低頻度で存在するに過ぎないが、日本の小麦品種に特異的に高頻度で存在し、その頻度は改良品種で35.1%、在来種では25.3%である(表1
)。
- Glu-D1f 遺伝子は、日本小麦品種を特徴づける重要なグルテニンの蛋白質遺伝子であり、同じ軟質小麦の中でも特に日本のうどんは中国のめんと比べても品質的に異なるので、日本小麦が世界的にみて品質的に大きく異なる特異性を示すものである。
- Glu-A1,B1,D1 遺伝子座における高分子量・グルテニン蛋白質の遺伝子構成は、中国品種で29
種類と幅広い遺伝変異を示すが、日本品種はわずか17 種類のみであり、日本小麦の遺伝変異は狭隘である(表2 )。
- グルテニンGlu-D1f 遺伝子が、日本品種に特異的に高頻度で存在すること、および中国小麦遺伝資源の幅広い遺伝変異と比べた日本小麦の遺伝的基盤の狭隘化は、中国から日本への小麦伝播時における限られた育種母材・遺伝資源による『始祖効果』および限られた一部のグルテニン遺伝子源の導入による『瓶首効果』と考えられる。
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成果の活用面・留意点 |
- 世界の小麦遺伝資源をさらに広範に探索・導入・評価して、新たなグルテニン遺伝子の導入により、日本小麦品種の遺伝的基盤を、大幅に拡大することが重要である。
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図表1 |
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カテゴリ |
育種
遺伝資源
加工特性
小麦
品種
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